亜風炉



夜空に打ち上げられた大きな花火に人々の歓声がドッと沸きあがる。私も釣られて上空に目をやる。大きな花火がパラパラと音をたてて消えた。一緒に来ていた照美を探すのも疲れてしまって、座り込んだ。足が酷く痛む。もしかしたら靴擦れを起こしているかもしれない。ドン、ドン……大きな音と共に先ほどよりも大きな花火が連続で打ち上げられた。もう、花火大会も終盤に近づいているらしい。



この年になってはぐれてしまうなんてなんて、情けないのだろう。暫く上空に見入っていたら、トン、と肩を叩かれた。叩かれたほうを見上げると、照美が息を切らして私の隣に腰を下ろした。「此処に居たのかい。随分と探したよ」「ごめん、私も探したんだけど……」「その割りには一人で花火を見ていたようじゃないか」照美の声が少し低くなった。あぁ、怒っているな。「すみませんでした、照美様。わざとじゃないんです」申し訳なさそうに下手に謝る。だが照美はまだ、機嫌が悪いのか無言のままだった。空気が張り詰める。最後の花火がドンと大きく夏の夜空に広がった。



「今ので最後みたい」「うん、最後のだけでも一緒に見られてよかったよ」照美は、最後の花火を確認したあとに立ち上がってズボンについた埃を手で払った。そして、私を立たせたあとに手を繋ぎ、指を絡めた。「今度は逸れないようにしないとね」美しい金髪が、琥珀色に輝く。「今度はぐれたら迷子センターに連絡しちゃうよ?」「そ、それはやめて……!流石に中学で迷子センターは嫌っ……!」私が必死に照美の腕にしがみつくと「冗談に決まっているだろう?」と笑われた。「兎に角、もう僕から離れちゃ駄目だからね」花火大会が終ったそこから、帰りの人々が押し寄せる。今度は大丈夫、きつく絡められているそれが離れることがないのだから。


打ち上げ花火

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