幽谷



後輩の幽谷から、メールがきて今から一緒に花火しませんか。と来たので、名前は友達とやろうと思って買っておいた花火を持ち外の物置においてある、バケツを取りに庭にでたところで暗闇に不気味に光る青色の火の玉が視界に入る。名前は驚きのあまり、言葉を失った。「……!」妙な沈黙のあとに、誰かのこらえていたような笑い声が近くから聞こえてきた。よく火の玉の付近を見ると、仄かな明かりの向こうに自分と同じくらいの少年が立っていた。「……って、なんだ、幽谷じゃないか。何しているのよ」「……なんだ、とは酷い言われようですね」幽谷は悪戯に笑ってゆらゆらと火の玉の花火をぷらぷらと揺らした。揺られるたびに炎はゆらゆら揺れて綺麗に見えた。



名前は不機嫌そうに「たちの悪い悪戯ね」といったあとにしっしっと幽谷を追い返すような仕草をした。勿論花火はしたいので、本気で追い返そうという気はあまりない。「悪戯……?折角沢山花火持ってきたのに、追い返すんですか?可愛い後輩でしょう?」ね?と首を傾げる。どうやら、幽谷もそれがわかるのか帰ろうとはしない。火の玉の花火はもう終わりかけなのか火が消えかけてきていた。「私、貴方のこと可愛いとは思ったことないわ。っていうか先輩って思ってないでしょう」幽谷は少し驚いたようだったが、すぐに口の端を持ち上げて小さく笑った。「……よく、わかりましたね。正直、驚きました」「……先輩を敬いなさいよ」そのとき、温い風とともに花火の火がふっと、消えた。「あ、バケツありますか?」「…………ある」



ため息をついて、名前はガレージから青色のバケツをだして水を張って、地面に置いた。其処に幽谷は先ほどまで名前を驚かした火の玉の花火を投げ入れた。ジュ、と火が完全に鎮火された音がした。「有難うございます。じゃ、沢山持ってきたんで、どうぞ」そういって差し出された花火には先ほどの火の玉花火が含まれていた。名前はそれを手にとってまじまじと見る。「……こ、これか。さっき私を驚かせたのは……!」「いやぁ、さっきの顔は中々面白かったですよ」思い出したのか、またにやにやと名前の顔を見て笑い出す幽谷。「思い出しただけでも腹が立つ。デコピンの刑に処してやる!」「暴力反対です」幽谷のおでこにデコピンをしてやろうと、押さえつけると幽谷は困ったように降参降参、と両手を軽くあげた。

の玉?

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