近畿



所在に困っていた、あいうえお!外の「ど」没の近畿(ジェミニストームのパンドラ)さん。古いし短い。



冷たい言葉をぶつければ、私の前から居なくなると思った。酷いことをすれば、私なんかに構わなくなると思った。今までそうだったから。そうしたら皆、私から離れていったから。名前のことが嫌いだったわけではない、寧ろ逆で好意を寄せていた。だからこそ、私の目の前から消えて居なくなって欲しかった。近づいて欲しくなかった。触らないでほしい、喋らないで欲しい。名前も不幸になってしまう。私はそれがどうしても嫌だった。名前が不幸になるくらいなら嫌われたほうがマシだった。好きな人が不幸になって喜ぶ、だなんてとんだ悪趣味だ。そんな性癖がある人も世の中にはいるとは思うけれど、とても歪んでいると思う。



「私に近寄らないで」そういったとき、名前が酷く寂しそうな顔をしていたのを思い出した。名前が伸ばした手を払いのけたのは私の方だ。彼女を拒絶したのは紛れもなくこの私だ。だけど、私は間違ったことをしたとは思っていない。私は正しいことをしたのだ。あのままずるずると一緒にいたのならきっと、私のせいで酷い目にあうのが目に見えていたのだから。で、も……。「……辛い」自分の望んだ結末だったはずの一人ぼっちの虚しい世界。それでも零れたこの言葉こそ、本音だった。どうして?私は正しいことをしたのに!名前の幸せになれるのだったら、構わないんじゃなかったの?本当、なんて自分勝手なんだろう。名前と離れてしまったら、本当に気が可笑しくなるくらい愛しさが溢れてしまって名前を抱き寄せてしまいたくなってしまう。



つい先ほどまで、名前が幸せならそれでいいと思っていたのに。いたはずなのに。(ああ、名前が不幸になってでも。一緒に……だ、なんて)自己犠牲なんてくだらない。私が愛していると言って、名前から離れたのだってとても独善的よ!偽善だ!だって、現に私は名前の望んだ答えを聞かなくて、私の回答だけを押し付けた。私は、恐れていただけだ。私の目の前で不幸になる姿を。



居なくなった名前の姿を、影を追いかけて叫んだ。息は切れていなかったが、別の意味で息切れを起こしていた。「名前!私も、」駄目ね、結局私も欲にまみれた人間の一人だ。名前がそんな私の姿を瞳に映して、相好を崩した。

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