テルテル坊主



!あまりにも不謹慎だったから普通のも書いてみた。不謹慎な方→最後の衛星に口づけを



明日の天気を雨だと伝えたお天気お姉さんの顔は整っていて素晴らしいものだったけれど、私はテレビのリモコンでそれらをかき消した。プツン、という音と共にすべての音声と映像が途絶えた。「うー、明日は英聖と遊びに行くのにー、楽しみだったのにー。久しぶりに部活休みだっていうからー」ぶーぶー文句を垂れ流しながら、ソファーでゴロゴロする。英聖は「そんなの俺だって同じだ」と軽く睨む。「……なんでこう前々から決めていた予定を、都合よくぶち壊すのかなー」予定調和だったはずなのに。何かいい案はないだろうか、と考えていたら英聖の紫色に塗られた唇が緩やかな曲線を描いた。



「テルテル坊主でも作っておくか?」割と落ち着いていて、怜悧な英聖からテルテル坊主だなんて可愛らしい単語が出てくるものだから微笑ましくなって、微笑んでいたら英聖に「……何が可笑しいんだよ」って恥ずかしそうに、少しだけ紅潮した頬を隠すように俯いた。「ふふ、いいね。作ろうか、テルテル坊主」「馬鹿にしたくせに、作るのかよ」「馬鹿にはしてないよー。可愛いなーとは思ったけど」



英聖の深い紫色の髪の毛を一房手に取って撫でれば、英聖がブツブツ文句を言う。
「それが馬鹿にしているんだって、なんでわかんねぇんだよ……。何だよ、可愛いって」可愛いという単語が気に食わなかったのか、不貞腐れている。「ごめんごめん、間違った。格好いいよ、英聖は」取ってつけたような嘘でも英聖が少しだけ機嫌をよくしたようだった。口には出さないけれど、何となくわかる。「思ってねぇくせに……。そんなこと」「まぁまぁ、とにかく作ろうか、材料用意してくるね」



私が、マジックと材料になりそうなものをかき集めて机の上に材料を広げた。「さー、作ろう!明日のために!」意気込みながら、適当に持ってきた材料を手に取ってテルテル坊主の頭を作って、輪ゴムで縛る。英聖も一緒になって材料を手に取ってテルテル坊主の頭を作って輪ゴムで止める。適度な大きさのテルテル坊主の顔を作るべく二人でマジックを手に取る。紫色のマジックを取って、口を作ると英聖が怪訝そうに覗き込む。「……なんで、紫なんだよ」「え?英聖だよ、これ」「ぶっ、俺かよ!じゃあ、格好良くかけよな」「はいはーい。任せて、絵心超あるから!」今度は、黄色のマジックを取って目を大きめに書く。英聖は鋭い瞳だけどこっちは少し丸くしておこ。



「はい、出来たー。どうよ?」「なんか可愛くね?格好よく書くって言ったじゃねーか」私が作ったテルテル坊主と現物を見比べて私は笑った。特徴とらえていると思うんだけどなー、とテルテル坊主を英聖の隣に並べてみる。「英聖のテルテル坊主もなんか可愛いじゃん」英聖が作ったテルテル坊主を突いた。私のに比べて少し小さい気がする。「名前だからな」「えー、私〜?なんか英聖のと比べて一回りくらい小さくない〜?」「小さいじゃん、お前」失礼な言葉が聞こえたが、こいつ相手に怒っていたらきりがないのでスルーしよう。そもそも、英聖は人を煽るような癖がある。これは天河原のサッカー部の殆どがあてはまるけれど。あ、喜多君を除いて。



「それにしても、材料余ったねー。西野空たちも作るかー」私の提案に英聖は名案だな、と余った材料を手に取った。また、適当に作っていく私のより小さめに作って、釣り目がちに目を書いている。喜多君か、と予想する。私は西野空を作ろうと材料を手にして、テルテル坊主適当に作るとマジックを手に取った。キュッキュッと顔を書くと、マジックが素材に染み込んで滲んだ。「ぶっ、西野空……っ、そっくりだな。この憎らしい感じが特に!」「喜多君それ見たら泣いちゃうよ?私より小さく作っちゃって……」可哀想に。と呟くと「いいだろうが、キャプテン来るわけじゃないんだし」と悪戯に笑う。見つからなきゃいいってことか。しかし、喜多のテルテル坊主は極端に小さい。



「さ、出来たし。つるしておこうか、窓際に」私より少しだけ背が高い英聖に四匹のテルテル坊主を渡すと英聖が括り付ける。仲良く並んだテルテル坊主が窓を見つめている。「……晴れるといいな、明日」まだ、機嫌が崩れていない蒼穹は何処までも遠く澄み渡っていた。ああ、きっと明日も晴れるね。テルテル坊主は外を眺めているのに瞳を細めた。



名前の家に、皆が遊びに来たようです。


「名前の家に来るのも久しぶりだよねぇ〜」我が家同然に寛ぐ西野空は図々しく「あ、僕、喉渇いたぁ〜」など言っている。それを喜多が叱る。苗字は苦笑いしながらも「今、持ってくるよ」と台所に身を隠してしまった。「馬鹿!少しは遠慮しろ」喜多が顔を顰めて西野空を注意するのと同時に。ポカン、と隼総が西野空の頭を叩いた。ポカンといい音がした。彼の頭は空洞だろうか。「隼総が嫌がるから。来られない、が正しいけどな」「おい、名前の前では言うんじゃねーぞ」隼総は面白くなさそうに、釘を刺すと星降は「わかっているって」とニタニタ含みのある笑みを浮かべる。明らかに、何か言いたそうなのだがそれ以上は触れなかった。



苗字を待っている西野空が、視線を彷徨わせる。ふ、とある一点に視線を止めた。「あれぇ?テルテル坊主ぅ?可愛いー」西野空が窓辺に近寄ってテルテル坊主に触れる、と「ん?」と何かに気が付いたように声を漏らした。「これ、隼総じゃん?でも、隼総はこんなに可愛くないなぁ。もっと忌々しい顔をしているっていうかぁ」さらっと失礼なことを言う西野空に、隼総が怒りを露わにする。「んだと?!勝手に人の家を荒らすな!」「隼総の家じゃないくせにぃ」そういって、別のテルテル坊主を手に取って笑う。
「ははっ、これは喜多だねぇ!小さいもん。わかりやすぅ〜」「……!!名前が作ったのか……?俺、俺……」がっくりと項垂れる喜多に「自分が作った」などと言えるわけがない隼総が申し訳なさそうに、俯いて目を逸らす。



「あ、僕もいるじゃん……って、僕名前に恨まれているのぉ?なんか可愛くないー、これ」「ただいまー」丁度苗字がお盆にジュースを五人分乗っけて帰ってきた。西野空が窓辺でテルテル坊主を弄っているのに気が付いて少し固まる。役目を終えたはずのテルテル坊主が未だに、窓辺につるされていたからだ。「…………あ、片付けるのを忘れていた」「名前、俺を作ったのは名前か?俺のことあんなに小さいとか思っているのか?」泣きそうな声で、詰め寄ってきた喜多に苗字が不思議そうに首を傾げたあとに隼総を見る。隼総は話を振らないでくれ、と言いたげだったが構わずに事実を告げる。「……ん?喜多君は英聖が作ったんだよ」その言葉に喜多の顔が英聖に向く。その顔には「なんであんなに小さいんだ」と書いてあった。隼総は俯いてこの場をやり過ごそうとしている。



「俺はいないの?名前」星降が俺だけ省かれている……。とショックを受けているのに名前が「ああー。ちょうど材料切らしちゃって」と苦笑する。「……残念」残念そうに、四人分のテルテル坊主を見つめる星降に次は作るからと宥める名前。「ていうかぁ、僕、作ったの名前でしょぉ。なんで僕がこんなんなのぉ?」「西野空を可愛くとか無理でしょー」言い訳もせずに、開き直ったように笑う苗字に西野空が不貞腐れたように口を尖らせた。その場にいた人間が全員うんうん、と頷いたことに西野空が更に面白くなさそうに眉間にしわを寄せた。

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