蛇とカメレオンと鳥と



「蛇と、カメレオンが飼いたいの」唐突だった。俺と蛇丸がピシッという効果音の後に、固まった。それから、すぐに名前の顔を凝視してしまった。何、言っているの?と。蛇とカメレオンを飼いたい、とはつまるところ俺と蛇丸と同棲したい……とか、囲いたいとか、そういう意味なのだろうか。深読みしているだけかもしれないが。さっきの台詞ではそう、とらえられても仕方のないことだ。


蛇丸もまったく俺と同じことを思ったのだろうか、あの爬虫類を思わせるような独特の瞳をぱちぱちと数度瞬いた。「……なんで、俺と蛇丸なわけ?俺だけでいいじゃん。名前に飼われるなら、構わない。お前色に染めて見せろよ」普段なら俺色に染めてやる、って言ってやるところだけど……、名前色に染まるのも悪くないな。なんて、妄想を頭の中で繰り広げる。蛇丸はそれに黙っていなかった。まるで蛇の威嚇のように声を荒げた。「シャーッ!どういう意味だ!それ!」蛇丸の威嚇を見るのは初めてではないので、俺はそれをさらりと受け流すことができる。こんなのをいちいち真に受けていたら、身が持たない。まあ、他校のやつが見たら、ひるむだろうけどな。



「へ?え……?」事の発端…、諸悪の根源の名前はわけがわからない……と唖然とした表情で俺と蛇丸を交互に見やった後に、押し黙った。「俺と蛇丸じゃなくて、俺にすれば?お前色に染まるのも悪くない」俺が名前の腕を引いて、耳元でそう恋人にするかのように、囁きかける。勿論、そんなことをして蛇丸が黙っているわけがなく「シャーッ!」と言った後に名前のもう片方の腕を乱暴に引っ張った。「シャーッ!名前に触るな!」名前はそれが痛かったのか、顔を僅かに歪めた。


「二人とも何の話をしているの?私は、今ペットを飼おうか、飼うまいかの話をしているというのに……」顔を曇らせて、そういった。俺らは、鈍器で殴られたようにポカンとしてしまった。「へ?」やっと、出てきた言葉は間抜けに部室に響いた。いつから、部室にいたのだろうか、気配を感じ取れなかった……大鷲がいて、笑っていた。何、俺たちの勘違いだったの?名前に飼われるの、悪くないと思うんだけどなぁ。と思いつつ、俺はやっぱりカメレオンを勧めてみる。ペットだとしても、名前に蛇を飼われるというのは癪だ。蛇丸もおんなじことを思ったのだろう、何処からか持ってきたのかわからないが、いつの間にかあった図鑑を片手に「これなんか、どうだ?」とやたらにカラフリーな、蛇を指差した。



「お前、そんなカラフルな蛇勧めているけど……、それ毒あるだろう。絶対」「……あ、本当だ。毒がある、注意って書いてある」名前も図鑑に書かれている小さな文字を読み取ったのか、「怖い……」と呟いた後に首を振った。「やっぱり安全第一だろ?蛇なんてかみつくし、危ない」「カメレオンなんて、飼育難しいじゃないか!」「ううーん、やっぱり難しいよね」首を捻って、ため息をつく。今まで会話に参加していなかった大鷲が首を突っ込んできた。「じゃあ、間をとって鳥類なんてどうっすか?名前先輩」
何が、間をとって……だ。鳥類なんて間をとっていないぞ。大体、なんで爬虫類から鳥類になるんだ。と突っ込みたかったが、名前の様子を見るとまんざらでもなさそうだった。



「お、いいねぇ!鳥、私も好きだよ。言葉覚えさせるのもいいかも」「それに手乗りにもできるかもしれないっすよ」名前は随分と乗り気だった。親しげに名前と話している。いつもに増して饒舌だ。……ま、まさかの伏兵、大鷲。全然マークしていなかった。あとで覚えていろよ。

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