席替え戦争



!夜桜たちの学年が判明する以前の作品です。ご了承ください。



自分の席に戻ってきた名前が薄っすらと笑顔を浮かべて夜桜に言った。夜桜は頬杖をつきながら一瞬だけ見上げたあとにすぐに逸らした。「ようやく席替えだね。いつも近くだったからそろそろ離れられるかな?」「あーはははは!本当だね、名前いつも俺の近くだもんね。でも、俺名前がずっと隣でもいいよ!じゃ、俺もくじ引いてくる!」ひらひら軽く手を振って、名前と入れ替わるようにガタンと椅子から立ち上がった。名前がそれを見送る。何処か気だるそうに、くじを引きにいった夜桜。名前がくじでひいた番号を確認しつつ、黒板に書かれている席と照らし合わせる。「五か。って……げ、前の席じゃん。やだなー」憂鬱だなと、窓際の席に別れを惜しむように机に頬をぴったりつけて目を瞑った。前の席は、黒板は見やすいが先生に当てられるリスクも少し高いし何よりサボれない、授業中に眠ったら即ばれるで名前は嫌だった。



「あは、ただいま〜」頭上から聞こえた声に、薄目を開いて確認すると夜桜が手に小さな紙の切れ端を持って帰ってきていた。乱暴に椅子をひいて座ると紙の切れ端を開いて番号を確認する。「どうだった?何番?」「……四だった。うわ、一番前だぁー。ついてないー……せんせー、目の前でサボれないじゃん!やだぁー。此処気に入っていたのにぃ」ぼやきながら小さな紙の切れ端をグシャグシャに小さく丸めて前の席の研磨の頭、目掛けて投げつける。見事、研磨の頭に当たり小さな衝撃に顔を顰めて研磨が振り返る。夜桜の姿を確認するなり、喧嘩勃発しそうな雰囲気になる。名前が避難するように、身を小さくした。巻き込まれたら溜まったものじゃない。「てめぇ!光良、何か投げただろ!」



命中した小さく丸められた紙切れを上靴で踏みつける。「あひゃひゃひゃひゃっ、悪い悪い。あたっちゃった?こんなのも避けられないのかよぉ?」ふっ、と見下したように研磨に挑発的な目を向けると、研磨の顔が見る見るうちに怒りに染まっていく。ダン!と勢いよく夜桜の席に拳をたたきつけた。周りの視線が一瞬だけこちらに集まったが、夜桜たちの姿を確認するとまた、がやがやし始める。



「てめ……!喧嘩売ってんのか?!上等だ!買ってやるよ!」「あはははははははっ、名前は何番だった?」騒いでいる研磨を華麗にスルー基、無視をして夜桜が名前の紙を見る。名前もこれにはある意味感心させられる。そして、その数字を見るなり自分の隣だと悟ったらしく、顔を僅かに曇らせる。「あはは、五番?ほんとーに?俺の横?三回目だよ?前は俺の斜め前で、今も隣なのに……あははははっ。凄いね凄いね!俺たち一緒の運命なのかも!」それを聞いた研磨は怒っていたのも忘れて、驚きを隠せず名前の紙をひったくった。「……うわ、本当だな。名前はこんなのが隣で本当に同情するな」「こんなのって、どういう意味だよぉ!」



名前に白い紙の切れ端を返すとニヤニヤ含み笑いをしながら研磨が夜桜に突っかかる。「まー、名前は兎も角。お前はいいよなぁ?文句いいながら、喜んでいるわけだし?なぁ、光良?」「ぶっは!なっ?!ばっ!名前の前でお前!」名前がポカンとしながらそのやり取りを眺めている。形勢逆転でもしたのだろうか、今度は真っ赤になった夜桜が研磨に掴みかかっている。「おーおー。怖い怖い、これだから名前も可哀想なんだ」何度も真っ赤な顔で最早、意味を失いかけている暴言を吐きながら、ガクガク研磨の体を上下にあまり加減もせずに揺す振るそれを研磨は涼しい顔で受けていた。「死ねっ!し……あっ、あははははは!お前の好きな奴、俺は知っているんだからな!」夜桜は急に研磨にも好きな相手がいたことを、思い出したらしい。余裕のある顔で好きな奴を知っていると言った、その瞬間研磨が大きく目を見開いて夜桜の手を無理やり振り払った。



「あぁっ!?何で知っているんだよ!」「あはっ、風の噂〜」「へー。マジで?いるんだ?だれだれ〜?私の知っている子?」名前がその話に興味があるのか食いついてきた。キラキラとした、瞳で夜桜にたずねる。夜桜がやけにさわやかな笑顔で名前に向き直る。夜桜は何かを思い出すような仕草をしながら口を開いた。「……あー。んーとねぇ確か、隣の組の「光良っ!てめえ、いうなあああ!!」夜桜の言っていたことは本当だったのか、言い終わる前に頬を朱色に染めた、研磨の耳を劈くような暴言にさえぎられてしまった。

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