ギガの風穴



!割と電波。外の「」の没。内容は違うし繋がっていないです。


ぽつりと名前が呟いた。ひどく悲しげな寂しそうな瞳で。「なんで、人って忘れちゃうんだろうね」人の記憶容量は無限大じゃなくて、パソコンや機械のように限りがあって……だけどパソコンや機械よりも容量は少なく、ずっと覚えていられないから……いらないものから少しずつ削除していく。大事なことだけを胸にそっと、仕舞い込んで。


「どうして、忘れちゃうんだろうね」胸にぽっかりと大きく黒い口をあけた。風穴からはビュービューと冷たい風が絶えず漏れ続けている。その風穴のふさぎ方がわからずに、ただ名前は両の手で、風穴を押さえつけた。それでも、指と指にできてしまった小さな隙間を風が通り抜けていく。風が指先を冷たくした。「どうして、夜桜も……忘れちゃうんだろうね……」


風穴から手を離して、夜桜に向けて手を触れそうな程に伸ばした。伸ばした手は虚しく夜桜をすり抜けた。ぽたぽた、流れるはずのない涙が床をすり抜けていった。「ああ、辛い、……辛いよ。忘れたくないのに、忘れたくないのに……」夜桜の隣には新しい彼女がいた。肌は透けるように白くて、はにかむ笑顔は暖かい。夜桜が笑った、(あの作るような、狂ったような馬鹿笑いじゃなくて。)彼女も笑った。「忘れたくない、忘れたくないのに……。私も、忘れて……しまうのね」どうして、人は忘れてしまうんだろう。とても、大事なことなのにとても愛していたのに、段々と薄れていって、何もかもが空気に溶けてしまって、最終的には何も抜け殻になってしまう。名前が嘆いた。「結局、私も同じなのに……夜桜を責めるなんて出来ないわね……」いつか、全てが褪せていってうやむやになって最後は残骸に。名前の姿が薄れていった。


一人になった夜桜が、棚の引き出しから一枚の写真を取り出した。ポタリ、写真に落ちた雫が形を失ったことを知らない。

ガの風穴

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