さよなら、ジュリエット



割と気が触れている。夢主は最初から死人。



名前が死んだらしい。篠山がそう言っていた。俺は断じて信じていない。名前の葬式には無理矢理連れて行かれたけれど、名前は俺を置いて逝ってしまうわけがないと、俺はその場で大笑いした。笑いが止まらなかった。だって、名前のマネキンは本当に精巧にできていて本当に、綺麗にできているから、まるで、本物のようで俺は笑いが止まらなかった。(本当に死んじゃったんじゃないかって、思っちゃった。皆して、俺のこと嵌めようとしているんだ)笑っていたら、磯崎に手加減なしにグーで殴られた。磯崎の拳が痛かったのを覚えている。ヒリヒリ腫れる、頬を手で覆いながら磯崎を見上げれば磯崎は泣いていた、篠山も、毒島も柄にもなく涙を浮かべていた。俺は笑っていた。笑いが止まらなくて無理矢理大人に会場から引きずり出された。こっぴどく叱られた。でも、俺は笑っていた。「あは、っ、あははははは、あははははっ!!」



前述の通り、俺は一応行った。だけど、俺は信じていない。だって、名前は俺のことを大好きだって言ってくれて、その上に俺が不安で笑っていたときに夜桜が望むならばどこにもいかないって言ってくれていたし、夜桜以外好きにならないよって、綺麗に微笑んでくれていたから俺はその言葉、無性に信じたくて……無条件に信じていた。名前の細くてしなやかな腕に抱かれたい、撫でてほしい、あとキスもしてほしい。好きだって言ってよ、もう一か月は聞いてないんだ。名前が不足している、名前が俺のひび割れた部分から漏れ出して、全部全部、無くなっちゃう!「ねぇ、篠山ァ……、あはははははっ、名前は何処へ行ったの?」「……光良……名前は。死んだんだ、もうやめてくれ。お前だって本当はわかっているんだろう?なぁ、気が触れたようなふりをしていても、」「そんなの嘘だ。名前は俺のこと大好きだって、何処にもいかないって言ったんだ!名前がいない、名前がいない」



名前、名前、名前、名前………!何処へ行ったんだろう。あれか、聖帝が、最近俺が頑張らないから名前を隠したの?それとも、篠山がどっかへ隠しちゃったの?あ、もしかして俺が頑張らないから名前が自分からどっかいっちゃったの?名前の家にも部室にも俺の部屋にもいない。何処へ行ったんだ、お願い返してよ返して返して、俺の名前。俺の練習が、頑張りが足りないって言うならもっともっと頑張るから!だから俺を置いて行かないで!



「なぁ、篠山ぁ、俺の名前返してよ!何処へ隠したんだ?!どうしよう、名前がいなくなっちゃったんだ、篠山隠していないの?……なあ、篠山ぁもしかしたら俺のせいかもしれないんだ。俺が頑張らないから、いなくなったの。どうしようどうしよう、名前、俺のこと嫌いになったのかも。どうしよう!ふふふふふふ、アーッハッハッハッハッハッ!」「光良……、本当にそんなことを信じているのか?」冗談だろ、お前はそこまで気が触れちゃいない、それともショックで本当に頭が可笑しくなってしまったのかとか意味わからないことを篠山がずっと口走りながら俺の肩を強い力で掴んだ。肩に食い込む肉が、痛くて俺は笑った。笑う口が裂けているのか、痛みを伴うだけで、全然面白くなんかない。「何、言っているの?お前、意味わからない!わからない!あは、あはははははははははははははっ」篠山が愕然としながら、俺を揺さぶった。何かをしきりに強く訴え、繰り返しているけれど(俺の)笑い声で、何もかもがきこえ、な、い。




後半の没部分。見たければどうぞ。でも、没より上の方が終わりはいいかも。



ああ、名前を探さなきゃ。昨日は、教室を探したんだ。じゃあ、今日は河川敷を探そう。俺が見つけるのを待っているんだよね?そうだよな。ごめんな!真剣に探すから俺のこと嫌いにならないでくれよ!「なあ、篠山ぁ……今日は河川敷を探すんだ。ふふふ、篠山はどこにいるか本当に知らない?名前ヒント言っていなかった?ちょっとだけ教えろよ!「……、名前は空だ……。光良にも逢えないくらい遠いんだよ」天を見上げて、篠山が零れそうな涙を抑えた。ああ、空か、空だな!なーんだ、そんなところにいたのか。そこに行けば名前に逢えるのか!よかった、場所がわかって!じゃあ、早く行こう。名前に逢いに。名前の為なら俺は何処へだって行けるのに、なんで篠山は「行けない、無理だ」って辛そうな顔のまま断言するんだろう。なあ、なんで俺を止めるんだよ、離せよ、篠山。「だって、一人ぼっちの名前が可哀想だろう?あはははっ。俺ずーっと居てあげるんだ!」



title 箱庭

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