水鳥2



!あともう1回続く

自分の感情に気がついたのは、ごく最近のことだった。そう……確か天馬に会うほんの数日前。数ヶ月とたっていないとき、ある女のことばかりが頭を占めるようになった。口の悪い自分に対して、彼女は正反対とまではいかないが清らかで綺麗な女だった。名前はそんな私を見下したり、避けたりしないどころか……友達になってくれた。嬉しかった。だって、大半の女子は私を怖がるか……それか影で悪口を言うかのどちらかだったからだ。そんな名前への思いに気がついたとき、私はどうしたらいいかわからなくなったしまった。



今までしていた他愛のない雑談の内容を思い出せない。どう接すれば適切だったのかわからなくなった。今までしてきたように、出来なくなった。それは、名前を困惑させてしまっていただろう。それでも、名前と離れるという選択肢は私の中に出てこなかった。名前も私も女、という性別だった。つまりこれは……おかしなことで、私は同性が好きになってしまったんだ。私は気持ち悪い。同性の友人に対してそんな穢れた感情しか持ち合わせていないのだから。そんな時天馬に出会った。天馬は、サッカーが大好きな男で……他のサッカー部員にないようなキラキラとしたものを持っていた。よくわからないけど……人間としてとても気に入った。それが恋愛としてなのか、といわれれば違うと答えるだろう。私は天馬を利用することにした。利用といっても悪い意味ではなくて、話に出すようになっただけだ。



「でな、天馬が……」
ああ、昔どんな内容で笑いあっていたっけ。少なくとも、こんなのではなかった気がする。名前が聞いているのか、聞いていないのかいつものように、適当な相槌をうっている。最近、名前が笑わなくなった。代わりに、寂しそうな遠い目をするようになった。私のせいかもしれない。なぜなら、私の態度が変わったから。でも、どうしたらいいのかわからなかった。言い訳を連ねれば連ねるほど、心が軋んだ。何かが体の底のほうでわだかまっている。
「名前……は、好きな人とか居ないのか?」
私の口は私のものでなくなってしまったのだろうか。聞きたくないのに、何故自分の首を絞めるようなことを聞いたのか。自分の意思とは反して、答えを欲していた。己が望む回答を。自分に都合のいいものばかりを。
「そっか……」



やっぱり、名前は何処か遠いところを見ていて適当な相槌。聞いていないことに気がついて「……なぁ、名前。聞いているか?」と聞いてしまった。
「うん……聞いているよ、天馬がどうしたの?」
名前は勘違いを起こしていた、天馬を好きなのだと。違うのに、私が見ているのは。目の前の名前だ。私が問うと、名前はとても申し訳なさそうな顔をしてすぐに詫びた。私は嘘をついた。確かに心配していたけれど、名前に言った内容は嘘だった。
「友達だろ?」
自分の心を騙すように、言い聞かせるように言った言葉はかつての私の言葉だ。今の私は持っていない。名前はその瞬間とても、安堵したような様子を見せた。やっぱり、これが正しいんだよな……?名前……でも、ごめん。私は名前の体を、引き寄せた。



戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -