神童



悔しいほどに神童は頭が良かった。音楽も、サッカーも出来て更に勉強もか。なんだろう、人間性の違いって奴なんだろうか。根本的に私とは違うのだと否定された気すらする。そんな神童が勉強を一緒にやりたいなどというものだからてっきり、私は神童にも苦手な科目があったのか〜。意外と普通のところあるじゃん。やっぱ、同じ人間なのね、と嬉しくなって私の部屋に呼んでみたのだが……(なんか神童が私の部屋で、やりたいとかいいだしたから。)



「……神童、できるじゃん。一人で出来るじゃん。私とやらなくていいじゃん」頬杖をついて、神童が黙々と数学をといていくのを見て呟いた。一度も躓いたり、聞いてきたりしないところを見ると苦手というわけではないらしい。寧ろ、私よりも理解しているようにすら見える。小さなテーブル越しに、神童のプリントを見るが答えは間違っていないように思える。全てを理解しているわけではないから、若しかしたら神童も間違えているかもしれないけど私の見た限りではない。神童は私の独り言のような声に、ピクリと僅かに反応を示した。がすぐにまた手を動かす。「っていうか、霧野はどうしたの。あの子とやればいいんじゃない?」ピンク色の髪の毛を、二つに縛っているあの子を思い出した。幼馴染で大抵、霧野と一緒に居るから神童一人だとなんだか珍しい。「あ……ああ。そ、その……きょ、今日は忙しいって……」しどろもどろになりながら、瞳を彷徨わせる。プリントからそれた瞳を覗き込もうとしたら逃げられた。



何か違和感。だが、詰問しようとは思えなかった。気のせいだったら神童に悪いし……。「へー……大変だなー。霧野はリア充か。羨ましいーなー」私の中で霧野は勝手にリア充組とインプットされた。割と非リア充な私には、妬みの対象である。今は神童と居るから、完璧な非リアではないのだろうけど……出来れば私だって、買い物とかに出かけたいものだ。「……そ、そうだな」一言そういっただけで、私と視線を合わせようとすらしない。何、この気まずい雰囲気。会話はぎこちなさ過ぎて、そのうち会話が成り立たなくなりそうだ。私のこと苦手なら、誘わなきゃいいのに。私は別に神童は嫌いじゃないけど、この雰囲気はダメだ。あまり仲良くないと余計にこの空気は耐えられない。「何で私とやろうと思ったの……?神童一人で出来るし、私は要らないと思うんだけど……」



ため息とともに吐き出された、声はあまり賢そうではない。神童より素行も悪ければ頭もよくなくて、取り柄もない人間だ。「いや……俺は、その……」「何なの、はっきりしてよ」とんとんとテーブルの上においていた、指先がいらついたようにリズムを刻んだ。神童ははっきりしない。神童は私を馬鹿にでもしにきたのだろうか。確かに神童より頭は悪いけど。だとしたら相当、底意地の悪い。「名前が好き……なんだ……」ボソボソ何とか聞き取れるレベルの声量で、顔を真っ赤にした神童が言った。からかっているのかとか、何の罰ゲームなんだとか思ったが……神童はそんなことをする人間ではないとすぐに思い直した。というか、本当ならばこのタイミングでよくそんなこと言えたものだ。ある意味感心してしまう。



「……だから、勉強も口実で……。うぅ……」段々と声が、薄れてゆく。戸惑い馬鹿みたく、口をポカンと開けていた私は何も喋れなかった。んな、馬鹿な。とかありえないという言葉ばかりが頭の中で渦巻いている。また、気まずい雰囲気が流れた。空気よめっ!この後どうするんだ!と目で訴えかけていたら、神童は涙を目に浮かべていた。う、泣かないでよ……お願いだから……。私が悪いみたいじゃん。

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