マキ



不満だった。いつも、与えるものはマキから。全て、マキからだった。キスをするときも、好きだって言うときも。マキから。不安になってしまう。だって、名前は全然、自分から何も言ってくれない。お人形さんに恋をしたわけじゃないの。マキはね、名前が好きなんだよ。ねぇ、だから少し意地悪すること許してね。



「名前〜!」今日もいつも通り、名前の少し小ぶりな胸に顔を寄せる。暖かい、名前の甘い香り。マキ名前に抱きつくの大好き!「わっ、と!マキちゃん」照れた名前が困ったようにはにかむ。名前の癖。いつも、初々しい反応を返してくれる。だから、マキはやめられないの。「ね、今日はお願いがあるの」猫を被った甘い声を出す。名前がマキの声に真剣に耳を傾けた。まるで、自分の声じゃないようなその声に反吐が出そうになった。「名前からキス、してほしいな」お願い、と名前の腕に自分の腕を絡めてねだってみる。気がついて、気がついて。不安なの。名前にしか埋められない隙間なの。それに押しつぶされて、息苦しいの。名前がマキを好きじゃないみたいで苦しいの。名前が困ったように眉を眉間に寄せ、頬を朱に染めた。



「え……と」「ほら、早く、ね。」名前の瞳をジーっと、黙って見つめる。視線は逸らさない。「ど、どうしても?は、恥ずかしいよ」視線をマキの、足の指先あたりに落とす。大丈夫、今誰も居ないじゃない。マキと名前だけなのに、何が恥ずかしいの?「あ……う……。じゃ、目瞑ってよ」名前が覚悟を決めたように、マキの両頬に両手を添えた。マキは素直にそれに従って目を閉じた。準備オーケー。マキはいつでもいいよ!しばらくして、名前の顔が近づいてくる気配がした。ただ、じっとそれを待つ。



ちゅ、と甘いリップノイズ。頬に触れた柔らかなそれ。それを合図に、マキは目を開けた。目の前には名前の照れた顔。「……頬じゃ、駄目かな?いつか、ちゃんと唇にするから……今はそれで……許して?」「……うん」マキもつられて、照れてしまう。やられる側の気持ちってこんなんなんだ。じんわりと胸が温かい。それが全身を伝って、熱になる。「大好きだよ、マキちゃん」うん、名前の気持ち……ちゃんとマキに伝わったよ。

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