冬花



友達ごっこのやつ。没百合SS

名前さんはいつも私を可愛いといって髪の毛を優しく撫ぜてくれる。優しいその掌が大好きだった。名前さんは大人しい私と違っていつも周りに誰かいて、賑やかだ。私なんかは近づけるわけもない。だけど名前さんは優しいから私を見つけるとすぐに駆け寄ってきてくれて私をその輪の中に入れてくれる。私にとってまるで天使のような、女神のようなそんな人。自然な動作で、私を撫ぜる。私は何よりも、この時間が一番好き。「冬花は、今日も可愛いね」



決まりきったような台詞を口にする。涼しげな表情で穏やかな笑みを湛える。私はそれとは正反対に火照る頬を押さえる。そんな言葉言われ慣れているわけではない。そして、そんなことを言うのは名前さんだけ。きっと他の人に言われてもこんなに苦しくないよ。「っ……そ、そんなことないよ」搾り出した声は少し震えていた。名前さんの手が私の頭から離れた。名残惜しいけれど、私はその手を掴むことができない。同性だから、友達だから。色々な理由が私にまとわりついている。「冬花、好きだよ」綺麗な微笑を浮かべて私に好意的な言葉を述べる。言われなくてもその後の言葉はわかるよ。多分こうだよね?「友達として」「あ、有難う……。私も、だよ……」寂しくて、辛くて、悲しくて。だけどそれを言葉に出すことなんてできないから。作り笑いを浮かべるだけ。せめて、名前さんを困らせないように、と。

名前さんは優しいけれど私の中で多分一番残酷。名前さんがしていることは私を苦しめるだけだもの。

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