都築



拒食


僕は無力だった。名前がただ、死にそうな程にガリガリにやせ細っていくのをただ黙って、見ていることしかできないのだから。「ねぇ、名前。もう、十分だよ……」



昔の名前は健康的でとても美しかった。全然太ってなんか居なかったのに。名前は太っているという妄想に囚われて、勝手に絶食したりする。僕が、言っても名前は聞き入れてくれない。無理やり食べさせたこともあった。だけど、名前はトイレで全部胃の中のものをぶちまけ、吐いてしまっていることを僕は知った。手には吐きだこが出来ていた。歯も胃酸によって、少しずつ溶けていく。僕に出来ることなんてなかった。僕は勘違いしていた。僕は名前を救えると思っていた。でも実際は……僕はただ名前が日に日に弱っていくのを見ていることしかできなかった。



「こんな、流動食まで、出されて……本当に死んじゃう……よ……」部屋の隅に追いやられている、流動食を一度視界にいれたあとに僕は下唇を噛んだ。こんなに自分の無力さを痛感するとは……。「駄目だよ。まだまだ太っているもの」しきりに体重計に乗っかっては、まだだ、まだだ……。と呟いている。きっと、名前の理想の体重なんて無いんでしょ?名前の背中を僕は泣きながら見ることしかできなかった。誰か名前を救って欲しい、僕にはできない。僕は名前を救えないただの無力な学生。「……ねえ、静君……私、綺麗になったかな?」そんな、僕を知ってか知らずか名前は僕に問いかける。「うん……」「もっともっと、痩せて静君に相応しくなるからね」


名前がやつれた病的な笑みを僕に向けた。

僕は無力だった。

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