月村



前回の格好悪い、月村君の逆襲


名前が目をまん丸にして、俺を見つめていた。どうして?どうして?と目で訴えかけている。暗い色のガラス玉に俺が映りこんでいた。ゴクリと生唾を飲み込んで、名前の首筋に噛み付いた。赤い何かが、滲んだ。それがなんだか、面白くてその白い首筋にまた噛み付く。「ちょ!月村……?!まてっ!」いつものように気丈に振舞っているが、強気な余裕のある声がいつもと違い震えていた。動揺を隠せずにいる名前が何処か滑稽に思えた。こんな名前を俺は知らなかった。いつだって俺に対して高圧的な態度を取る名前しか知らない。



「待たないし、そんなのは聞かない」まだ、犬扱いする名前に苛立ちを覚えた。今は俺のほうが優勢で名前が劣勢なのにも関わらず名前が必死に抵抗するものだから、それが可笑しかった。だって、お前の力じゃ俺を退かすことだって出来ない。今まで俺は、お前に従ってやっていただけ。本当は名前にこんなことだって簡単に出来る。犬に噛み付かれた、飼い主っていうのはどんな気分なんだろうな。力でねじ伏せることなんて、簡単だったんだ。それを知っていて、やらなかっただけにすぎない。俺が唇をふさいでやると名前から力が抜けて、段々と抵抗がなくなっていった。虚ろな、真っ黒な瞳が潤んでいた。一度唇を離して、ペロリと唇を舐めると快楽に打ちひしがれた。「ごめ、も……やんない……から。だか……ら、月村。やめ……」ツー、一筋だけ涙が頬を伝っていった。名前が脅えているのにようやく俺は気がついた。俺は動きを止めた。心臓がドクンドクン嫌な音を立てている。ひりつく様な痛みは増すばかりだ。いつもいつも、犬のように扱うから。だから、名前に少し意地悪をしてやるつもりだった。それだけだった。



……でも、違う……これは俺が望んでいた、それじゃない。じゃぁ、俺は何を望んでいたんだろうか?脅えさせたかったわけじゃない。対等な関係……?大体なんで、俺は名前にこんなことしているんだ。別の方法でも良かったじゃないか?恋人のそれのような行為は明らかに俺と名前の間柄には相応しくない。俺は、俺は…?名前が好きなのだろうか?意地悪にしてはあまりにも悪質だ。……ああ……そうか、俺は名前が好きなんだ。だから、こんな酷いことしたんだ。俺……にぶっ……。「……悪い。名前が、好きだ」



「……あ、え……?月村……急に何……?」名前が困惑しきった表情を浮かべた。よりにもよって、今の台詞を聞きかえすな!今どれだけ勇気を振り絞ったかお前わかるのか……?!わかんないよな。「だーかーらっ!名前が好きだから!今、気づいたんだ!」今……本当に今、気がついたのは自分でも間抜けだと思うし、馬鹿だと思うけど!仕方ないだろう?!……だから、犬から……せめてもう一ランク上に格上げしてくれよ!名前のこと、俺がずっと守ってやるからさ。

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