セイン



「とある楽園の天使の話」の没バージョンです。


だから、下界の物なんて嫌いなんだ。何で我を置いて逝く?姿形が我と、違ってもいい。ただ、傍に居られればそれでよかった。別になんてことはない。ただ、一緒に居て、笑って、買い物して、それから……それから……。ヘブンズガーデンでたまにお茶なんかしたり、歌を歌ったりして過ごせればいい。多くなんて、望んでいないはずなのに。



「別れの言葉なんて聞きたくない!」怒鳴るようにそう、名前に酷い言葉を言った。名前はそんな荒れた我を見て目を細めた。何で、そんな平気な顔をしているんだ。「私だって、お別れは嫌です」「なら、ずっといればいいだろう?我の傍に居ればいい!」そう捲くし立てると、先ほどと変わって泣きそうに歪んだ。泣きたいのは我の方だ。置いていかれる身にもなってみろ。これからずーっと長い時を名前なしで生きなければならなくなってしまったではないか。どう、責任を取ってくれるのだ?人を愛しいという感情を教えてくれたのはお前じゃないか。



「ごめんなさい、ごめんなさい……セインさん」「謝って欲しいわけではない!」やめてくれ。違うんだ。ただ、一緒に居たいだけなのに!喉が痛い、焼け付くようにひりつく。感情の制御ができない。感情は逆流する。それは苛立ちに変わる。それは、自分の気持ちを素直に言えない自分の情けなさに対してなのか、はたまた死を受け入れようとしている名前に対してなのかわからなかった。ただ、愛しさと悲しさが溢れてきて、どうしようもない胸の痛みに苦しみ、悶えていた。

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テーマ「人外ファンタジー」
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