宇都宮



!元々はあいうえお!の没。繋がりとか全然ないんで単品で。


少し遠くから、鬼の声が聞こえる。「もぉーいいかーい」と歌うように大きめの声で言う。私はまだ、隠れる場所が見つかっていないため少しあせりながら「まーだだよぉー」と少し声を張り上げて言う。もう、皆はどこかへ隠れてしまったらしく物音が聞こえない。本当は草葉の陰や、遊具の影に隠れたかったのだが、先客がいて追い出されてしまった。



「……名前?」小さく私を呼ぶ声が聞こえた。私があたりを見回しつつ、その声を辿る。「こっちだよ」草葉の隙間から、小さな手が手招きをしていた。私が近づくと手を軽く引っ張られた。私はそのまま、一緒にその場に屈みこんだ。「あ、虎丸君だったの……?」「しっ……。静かにして。静かに話さないと、ばれる」虎丸君が人差し指を口元にあてて、私に静かにするようにいった。私はそれに慌てて小声で話す。辺りを見渡して一応、確認をする。鬼はもう、私たちを探し始めている。これでは、もう移動は出来ないだろう。残念だけど虎丸君は私と心中だ。また、逆も然り。どちらかが見つかれば必然的に片方も芋づる式に見つかるわけだ。



「ごめんね、虎丸君」一応詫びると、虎丸君は全然気にしていないと、言うように笑う。「大丈夫。鬼は反対の方面へ行ったし」私は少し安心して、ホッと安堵のため息をついた。最初に見つかってしまえば、次は私が鬼だ。「さっきもそうだけど、中々隠れる場所が見つからなくてさー……。友達にも追い出されて、困っていたんだ。有難う」「困ったときはお互い様だから。それに、一人で隠れていたら話す相手もいなくて詰まんないし」確かに息が詰まりそうになるし、待っている間が暇だ。そこを考えると虎丸君の言っていることは中々合理的だ。鬼の声が、聞こえる。私たちはまた、息を潜めた。


ーだだよ!

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