藤丸



「此処と、此処と此処と、此処わからない」プリントのわからない問題を名前の白い指が示した。いくつか数えるのも面倒くさい。「……殆ど全部……」僕がこれじゃ、基礎から教えなきゃ駄目じゃないか……。と、困った視線を投げかけると名前は清々しいほどの笑みを浮かべた。諦めの色が伺える。「ふぅ……仕方ない、英語は諦めよう。投げる」そういって名前は英語のプリントをテーブルの隅に置いてある数学のプリントの上に重ねて置いた。そして、クリアファイルから国語のプリントを取り出した。「……ねぇ、さっき数学と現社でも同じ言葉聞いたけど……殆ど投げてない?」僕が知る限り今日で三度目だった。その言葉を無視して国語のプリントに目を通していた。そして、名前がプリントを英語の上に重ねた。先ほどよりも心なしか沈んでいた。声にも元気が無い。



「もう駄目だ……詰んだ」「もうちょっと頑張ってよ……。僕だって全部教えてあげられるほど頭いいわけじゃないんだから」積まれたプリントの中から僕は数学のプリントを取って、名前の前に置いた。名前はそのプリントを見て顔を顰めた。「もう、うんざりだ」といいたそうだった。「はい。問一から一緒に頑張っていこう」「ううー……。何度やっても、答えがでないんだけど!」名前が必死に何度も式を書いては、消してを繰り返す。僕は時計に目をやる。短い針が五を、長い針が三のあたりを指していた。勉強会と称したものにもう一時間も時間を奪われてしまったのだ。少しだけ時間が惜しいと思った。時間は止まらない、電池でも抜けばあの電池で動く時計は止まるだろうけど。



神様、神様……少しだけ休憩することを許していただけませんか?このままでは僕と名前と愛を育むことも出来ません。……よし、ばっちり。神様の了承も取れた!……嘘だけど……。残念なことに今の僕には神様の声は聞こえない。「少し、休憩…する?ずっと、やっていると疲れて余計にできなくなるし」僕がそう提案すると、名前が少し元気を取り戻した。うん、今の提案は僕のためでもあるんだけど。……寧ろ僕のためが七割くらいを占めている。だって、全部、勉強に時間とられてしまったら僕が嫌だからさ。僕は、積み上げたプリントの上に数学のプリントを重ねた。
さぁ、何をして遊ぼうか?

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