平良



なんで、こんな事態になってしまったのか。大方検討は自分でもついているのだが……まずはこの状況を何とかすることが先決だろう。よりにもよって自宅の鍵を忘れてしまうとは……。昨日、友達と遊びに行ったときに別の鞄に鍵を入れてしまってそれを移し変えるのを忘れてしまったと、理由は至極簡単なものだ。



両親は共働き、そのせいであと最低でも二時間は帰ってこない。時計を見てため息を吐いた。楽しくない時間ほど、流れるときが遅く感じる。友達を頼ってもいいのだけれど、習い事だのなんだので今日は予定があるらしい。流石にそれをサボってくれ、なんていえるわけがない。玄関に座り込み、空をボケッと眺めていたら見慣れた顔が視界の片隅に入ってきた。「あ、平良。今、帰り?」私が引き止めるつもりで声をかけると、平良はそんな質問を聞き流して逆に聞き返してきた。「名前そんな所で、何しているんだ」まだ制服じゃないか。とその声には呆れが含まれていた。「……鍵を忘れたらしい」「人事みたいに言うんだな……名前……」確かに人事のように言ったが、そうでもしていなければやっていられない。この青空の下、あと二時間待ちなんだぞ。私の気持ちがわかって溜まるか。平良は眉を寄せて、私の隣に腰を下ろした。まったく、何を入れているのだか、というほど重そうな鞄がドサリ、と玄関に置かれた。「……いや、現実を直視したくないだけ……。あと二時間は待たなきゃいけないし」



本当嫌になってしまう。だけど、平良がいたら多分時間は潰せそうだ。このまま一人で寂しく二時間待ちコースだなんて死んでもやだ。何とかして引きとめるか。「ねぇ、平良さん一緒に遊びませんか?」「俺を暇つぶしとか思っているのだろう、どうせ」うわぉ、鋭いな、人選ミスか。平良は鋭い目をこちらに向けた。別に怒っているわけではないと思うのだけれど、毎回この鋭い視線を向けられると怒っているんじゃないのだろうか、とドキッとしてしまうのだ。萎縮しているとまでは言わないけれどそれに近いものはある。



「俺の家来るか?外で待つよりマシだと思うし」平良が少しだけ思案した後に素敵な提案を言ってくれた。彼は女神か!「ナイスな提案だね。でも、いいの?」しかし……いきなりお邪魔しちゃ流石に迷惑と言う奴だろう。まぁ、此処に引き止めてしまった時点で迷惑な奴だという自覚はあるけれど。「別にいいさ。あ、でも俺の家以外いっちゃ駄目だぞ」最後の言葉だけ、不穏だったが……取りあえず時間を潰すことはできそうだ。

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