基山



暑いと人々は、悲しいかな……同じ事を考えるらしい。一人が考えることは何とやら、だ…。「あ〜あ……。滅茶苦茶混んでいるし……」パシャパシャと水音を立てて、子供が元気そうにはしゃいでいるのをみて、思わず口角を吊り上げた。無邪気な子供たちは暑さにも負けずに元気だ。元気なのはいいことだ。「子供は元気でいいね」「……プールは名案だと思ったのに〜!」「……そうかな……?」ヒロトは苦笑して、プールに足だけ浸した。プール独特の匂いが鼻につく。此処まで来て、本当今更だって思うけれど海にするべきだったんだ。そうだ。あ……でも、海も同じだろうか。浜辺ぎっしり人人人……では、同じことだ。……もう、何もかもが遅いけれどね。



「……名前は入らないの?」足だけ浸しているヒロトが私を見上げる形で見つめる。「入るよ?」私もヒロトの横で足だけ浸してみた。プールは冷たいというよりもどちらかというと温い……。この暑さと人の量を考えれば仕方のないことなのだろうけれど。これではあまり意味がない。「温水プールみたい……」ぽつりと言葉を漏らすとまた、ヒロトは苦笑した。「まぁ、うちにいるよりマシだと思うけれどね」「……それもそうか」「それより、もうちょっと露出の多い水着を期待していたんだけれど……」ヒロトがこちらに視線を向ける、何処か一箇所に視線が集中している気がする。多分気のせいだろうが。後半はなんだか、声が小さく独り言のようで聞こえなかったし。



「……ヒロト?」名前を呼ぶとこちら側に戻ってきたらしい。ヒロトは口元に笑みを浮かべた。「ああ、いや。一緒に水着でも買いに行こうか」「……なんで?これ、最近買ったんだよ?」「次、海に行くから新しい水着どうかなって、思ったんだ。それに、たまには恋人らしいこともしないとね」「成る程?」なんだか、丸め込まれてしまった気がするけれど海に行くのに新しい水着はいいかも。すると、ヒロトも「だから、一緒に選びに行こうか明日」と、妙に嬉しそうな表情で誘いを持ちかけてきた。ヒロトと買い物なんて、久しぶりだな。私は力強く頷いた。

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テーマ「人外ファンタジー」
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