風丸



風呂に髪の毛を浸すのは明らかにマナー違反だ。そう、小さい頃に親に躾けられた。だから、私は髪が長く伸びたときは、風呂に入るとき必ず髪の毛を縛っていた。なんてことはない、普通のことだ。女風呂に行けば神の長い人は皆、縛っている。「てことは、やっぱり風丸もお風呂に入るとき髪の毛、縛っているの?」素朴な疑問を口にすると、風丸が明らかに顔をしかめた。「急に何を言い出すんだ」「だって、風丸髪の毛長いからさ。やっぱり、お団子にするの?」



そんな妄想を頭の中で浮かべると思わず笑みが零れた。それに風丸が、苦笑した。「そうだな、そんな時もあるな」否定はしなかった。私はそれを肯定と捉えた。「普通に風呂に浸かると、髪の毛が湯船に入ってしまうからな」風丸の髪の毛は、長い。薄水色のその髪の毛は、女性のようにしなやかで艶やかだ。痛んでいないそれは、手入れが行き届いているように見える。「だよね。風丸のお団子姿見てみたいなぁ〜」そう、期待した口ぶりで風丸にいうと風丸は「それは、嫌だ」といった。「流石に、名前にそういう姿を見られるのは嫌だな」



私としては普段と違う風丸の姿も見てみたいのだが、風丸は嫌らしい。「やっぱり、好きな子の前では格好良くいたいからな」そういつもと変わらない、平然とした風丸が言う。そう、平然と言われるとこちらも反応に困ってしまう。風丸はたまに同い年とは思えないほどに大人びている。思考が、言うことが、よくも悪くも落ち着いている。「そりゃー、私もそうだよ。でも風丸のお団子姿は似合うと思うな〜」今度見せてね、と付け足す。「そうだなー……。俺が風呂に入っているときに入ってきたら見られると思うぞ」「変態〜」「まぁ、リスクっていうのは必要だろ?俺も見られたくないわけだし」そこまでリスクを冒さなければ、見られない貴重な風丸のお団子姿を拝める日は来るのだろうか。残念だけど、暫くは見られそうにないかもしれない。

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