喜多海



一面の銀世界に二人分の足跡が続いていた。シャクシャクと雪が重みに耐えかねて音を立てる。喜多海のマフラーが冷たい北風に揺れる。その冷たさに思わず、喜多海はマフラーに顔を埋めた。名前が手袋も着けずに、冷たい雪に手をつけた。喜多海にとっては、珍しいものではないのだが越してきた名前にとっては雪が珍しいらしい。そのはしゃぎっぷりを、喜多海が微笑ましげに見守っている。一回りほど小さな両手が、雪を握り丸めている。しばらくして、それがただの雪球ではなくて雪だるまを作っているのだと喜多海は気がついた。



小さな雪球を二つ重ねた雪だるまに小さな小石を掘り出して、くっつけた。そして、完成した雪だるまを玄関の階段の端っこにちょこん、と置いた。「喜多海作ったよ!」「……僕?」「そう!」小さな雪だるまは喜多海らしい。喜多海は顔を綻ばせた。そして、喜多海も冷たい雪に手を突っ込んだ。そして、少しだけ雪を掬い上げると両手で雪を固め、二つ雪球を作った。名前と同じように小さめの小石を探して顔の部分になる雪球に埋め込んだ。



「じゃぁ、これが名前かな?」一回りほど小さな雪だるまを先ほど名前が作った雪だるまに寄り添わせるようにおいた。それに名前が嬉しそうに微笑んだ。「わ、可愛いね。でも、二人だけじゃ寂しいかな?」また、雪だるまを作ろうとする名前の手に喜多海が目を向けると痛々しい赤に染まっていた。喜多海は雪に触れようとする名前を制して、手を握り締めた。「名前手、真っ赤だべ。もう、うちに入ろう?」まだ、少し物足りなさそうな様子だったが、寒さに一度ぶるりと身震いをして喜多海とともに暖かな家の中に入っていった。外にはまた、ヒラヒラと真っ白な雪。小さな雪だるまは二つ、仲良く並んでいた。

戻る

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -