線路



この学校は割りと他の学校に比べて随分と、自由な学校だと思う。皆が何かしら好きなものがあってそれを持ち込んでも何も言われないし。だから、授業中じゃないかぎりは漫画を持ち込んだり、ゲームとかしていても怒られないし、それらを没収されることもない。現に誰かさんが原稿を書こうが、フィギュアを並べて観賞しようが、先生はそれを咎めないし、干渉もしてこない。なぜなら、先生たちも同類だからだ。寧ろ、仲間。職員室によく色々なものを持ち込んでいるらしい。生徒と先生の間でゲームの貸し借りなんかも普通にある。私はしていないけれど。不自由は自由。自由なのは悪いことではないとは思うのだけれど、自由すぎるのはどうなのだろう?校則をとかあってないようなものみたいになっているじゃないか。



今日もクラスが別れてしまった、仲のいい友人と廊下で喋って帰ってきたら、私の机の上が占拠されていた。最近、隣になった隣の席の鉄道模型好きの彼によって、だ。なんてこった、凄いぜ。私の机の上も走っているぜ!細かいことはわからないけれど、よく出来ていることだけはわかる。感嘆の声を漏らすと、頭上から嬉しそうな声が聞こえてきた。「苗字さん、これの凄さがわかるのかい?!」「え、いや……詳しくはわからないけれど」なんとなく、細部まで拘っていることくらいしかわからない。精々これ、高いんだろうな。とかそういうレベル。残念ながら私はこういうものにあまり興味がない。「そうだ!今度僕のうちに来てよ!学校にはこれくらいしか持って来られなくてね!」彼が私の両肩を力強く、叩いた。嬉々とした表情は崩れない。こういうのが好きだ、とは一言も言っていないのだが、彼のこの表情を見て切り出しにくくなってしまった。



というか、女子でこういうものが好きな子って珍しいのではないだろうか。こういうのは専ら男子が好きなものという認識がある。でも、彼が嬉しそうな表情を浮かべるものだからこっちまでうれしくなってきてしまった。笑顔は伝染するんだね。ああ、でもその、大掛かりな鉄道模型……次の授業が始まるまでには片付けてよね。

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テーマ「人外ファンタジー」
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