パチッ。何気なく椅子に座ろうと椅子を引いたとき、小さな電気が生じた。所謂静電気だ。この季節は乾燥するから、よく発生するのだ。私はその痛みに驚いて、手を離した。がたん、と椅子が音を立てた。「っ……!」痛みに声が漏れた。私は静電気が大嫌いだった。いつ発生するか、わからないし。予測できないし、心臓に悪い。人に触れても発生するし、この季節は脅えて過ごさなければならない。静電気はある意味最強だ。そういえば、地面に手をつければ逃がせることが出来ると聞いたことがあるのだが。教室内でも、有効なのだろうか。下を見ればタイルが敷き詰められている。……駄目かもしれない。



判君が、私の痛みの声に「大丈夫か?」と近づいてきた。いつものように学校のアイドル判としての顔を貼り付けて。彼は二重人格か何かなのだろうか。周りの人々は騙されているが、乱暴だしとても凶暴な性格をしている。あの恐ろしい、口調を周りは聞いたことないだろうけれど、私は知っている。私は彼が苦手だ。彼が私に触れようとしてきたので私はその手から逃げようとしたが、一歩遅かった。パチッ、とまた私に電気が流れた。私はさっき静電気が発生したから、多分、判君からだろう。驚きと痛みで、判君から離れようとしたが、判君に腕をつかまれた。



「いってー、おい、心配してやったのに俺から逃げるんじゃねーよ。」低い声で私を脅すように耳元で囁いた。それはまるで、恋人のような感じにみえなくもないが……ドスがきいていてとても恐ろしい。顔を凝視すれば、いつもの優しげな笑みを浮かべている。うぅ、判君の本性を教えても誰も信じてくれないんだろうな。人望がないなんて……。口外したら、酷い目にあうのもなんとなく予想できるし。周りはキャーキャー「判君優しい〜!」とか言っているが私は真っ青だ。判君に気に入られているんだよ!なんていわれたこともあったけれど。私は気が気じゃない。気の休まる暇も無い。これならば、気に入られないほうがいいというものだ。ああ、そうだ、静電気なんかよりも怖いものあったわ。判君のことだけど。

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