烈斗



もうじき、春だというのに未だにちらちら降っている雪が忌々しい。前に近所のおじさんが笑いながら雪なんていいものじゃない。といっていたのを思い出した。私は此処に引っ越してくる前は、雪が珍しくて綺麗だったから大好きだったのだけど引っ越してきてからはその考えを改めた。雪なんて、いいものじゃない。電車は止まるし、移動速度は格段に遅くなるし。何より寒さにめっぽう弱い。雪が珍しくて、はしゃいでいたあのころに帰りたい。もう、戻れないけれど。



烈斗のサッカーをしている姿を見つめながら、その場に蹲り寒さに小刻みに震える。烈斗のサッカーを見たい、目に焼き付けたい。という一心でこの寒空の下応援していたのだが、割と限界が近いような気がする。ああ、なんか走馬灯が走っちゃうくらい寒い。このまま、女子中学生凍死とか新聞の一面を飾ったらどうしよう。あ、でも凍死が一番綺麗らしいね。うふふ……ああ、意識が朦朧としてきたよ。「ふぅ、終わった……って大丈夫だべか?!」ようやく、終わったのか烈斗がタオルで顔を拭いながら私に駆け寄ってきた。雪を踏みしめるザクザクという音が聞こえてきた。烈斗はサッカーをやっていたせいか私とは対照的に汗をかいていた。こんなに、寒いというのに動き回れば暑いらしい。人体の不思議。「大丈夫、ちょっと寒いだけだよ」



私が烈斗を心配させないようにそういうと烈斗が目をつりあげた。そんなわけあるか!といわんばかりにギュウギュウと私をきつく抱きしめる。「寒かったら中で待っていろ、って言ったべさぁ!無理して外で待つのは禁止だべ!」怒ったような声色だけれど、私にはわかる。烈斗は私を心配しているのだと。冷たい外気から守るように抱きしめてくれる烈斗の体に手を回す。暖かい。「ごめん……でも烈斗のサッカーしている姿見ていたかったんだもん……」言い訳のように言うと、烈斗が私の頭を軽く叩いた。「馬鹿。別に俺のサッカーしている姿なんて珍しくもないし、その……大してうまいわけでもないんだから、恥ずかしいべさ」照れたようにはにかむ。そんなことないよ、謙遜しないで。少なくとも私なんかよりもずっとずっとうまいし。私にとってはどんなにサッカーがうまい人より烈斗が格好良く見えるんだよ。烈斗はしらないんだね。誰よりも格好良く見えるってこと。



段々と烈斗の熱を奪って、温まってきた。ああ、きっと私たちの熱を共有しあえば丁度いい体温になるんだろうね。

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