風丸



あぁ、この状況をどうしたらいいんだろう……。あんまりこういう状況に、出くわしたことの無い俺は少しだけ困ってしまった。隣に座って俺の肩に寄りかかって寝ている名前を見て少し頬を緩めた。普段とは違って、あどけなく自然の顔をしている。こういうのって少し貴重だなって思った。起きているときの名前はいつも元気一杯で、世話しなく動いていて俺が元気を貰っている気がする。少し子供っぽいけれどそんなところも凄く可愛いと思っている。少しだけ電車が揺れて、名前の頭の重みが右肩にかかる。さっきまではしゃいでいたのが嘘みたいに静まり返っていた。



これが二人きりならキスでもしてやるんだけど。生憎、公共の場でしかも落ち着かない、電車の中。人が出たり、入ったりしてきて誰かかしら人が居るし……今日は休みだから人もいる。一応、俺にも羞恥というものがある。誰が見ているかもわからない状況でそれはない。起こさないように気をつけながら話し相手のいなくなった俺は片手を口に当てて大きく欠伸をした。眠い……。話し相手が居ないというだけで、随分と暇だ。



次は……、お降りのさいは足元にお気をつけの上……。無機質で事務的な、女性のアナウンスが聞こえる。まだ、目的地は少し遠いみたいだ。折角の休み、何処かへ出かけようと提案したのは俺だった。降りてゆく人たちを見送った後に、俺はまた名前に視線を戻した。気恥ずかしくて、言っていないけれど今日の私服は可愛い。



……起こすのも可愛そうか。と苦笑して束ねてある、青色の髪の毛を名前にかからないようにどけた。起こす理由なんて何一つ無い。あるとしたら、一人で起きている俺が少しだけ暇なだけ。小さく身じろぎをした名前の肩を抱いてまだ、大丈夫だと教える。俺が起きておいて、ちゃんと確認してお前のこと守っているから、安心して眠っていてくれ。

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