吹雪



天気予報の美人なお姉さんが嘘をついた。外は凄まじい勢いで雨が降っている。小雨や、家が近いなら走ってもいいのだが。この状態で家に帰るのは危険だと思う。前に雨の中で走っていたら、車に轢かれかけた。勿論怒られたし肝を冷やした。……雨の中走ったり、自転車に乗るのはやめたほうがいいね。安全のために。



大きくため息をついて空を見上げた。いつ止むか、わかったものではない。やむ気配もない。やまない雨はないはずなのにそれが永遠にも感じられる。肌寒いし、たまに落ちてくる水滴は冷たく風邪をひいてしまいそうだ。親に連絡でもしようかな、とぼんやり思案していたら不意に人の気配がした。振り返るとそこには見知った相手がいて、思わず笑顔を作った。相手も傘をもって居なかった。同じ境遇の人を見ると何処か嬉しい。別に他人の不幸は蜜の味!とか思ってはいないけれど、私だけだと悲しすぎる。「傘忘れたんだ?」と言うと吹雪君は苦笑いして名前ちゃんも?と聞いてくる。私は一度、頷き肯定する。折り畳み傘も今日に限って、鞄の中に入っていないんだ「この雨の中走って帰ると、風邪引きそうだし此処は大人しく雨宿りしようかなって」



賢い選択だ、とは思わないけど……これしか今のところ道がない。と苦笑した私の横に立つ。吹雪君の少しはねた髪の毛は曇天模様の空の下少し薄暗く映る。そういえばクラスわかれてからあまり会話していない。吹雪君は格好いいからいつも回りに女の子がいて話そうとすれば睨まれてしまうし、話しかけようにも、用がない。どんなことを話せばいいのかわからなくて黙っていたら吹雪君から切り出した。「ねぇ、また……こうして話してもいいかな?」と私の目をまっすぐに見て聞く。少し有無を言わさない感じに聞こえる。断る必要の無いので私は無言で頷いた。

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