芙愛



名前がさっきから地面にしゃがみこんでしきりに何かを探している。あたりには一面びっしりと生えている、シロツメクサ。何を探しているか、なんて容易に想像ができた。多分、僕の予想だと四葉のクローバーか何かを探しているんだと思う。それにしても、四葉とか五葉とかってどういう原理で四つになったり、五つになったりするんだろうね。そんな素朴な疑問を抱えつつ僕も名前の隣にしゃがみこんで何本か引き抜くように、軽くて折った。パキッという軽い音とぶちぶちという嫌な、音。それから適当に記憶を手繰り寄せながらそれらを編みこむ。



「名前、手ぇ出して」僕がそういうと四葉を探していた、名前が顔をあげて僕のほうを見つめた。「手?」語尾に疑問符を浮かべながら名前が不思議そうな顔をした後に僕のほうに両手を差し出した。「あ、若しかして、お菓子くれるの?」名前が急に僕に差し出していた両手を、パッと開かせた。お菓子をあげる、だなんて一言も言っていないのに……名前はすっかり、僕からお菓子を貰う気になっているらしい。キラキラとした瞳を向けている。その期待を裏切るようで悪いんだけど、今僕はお菓子なんて持ち合わせていない。「持っているわけ、ないでしょ」僕がそういうと名前は明らかに落胆したように、肩をがっくりと落とした。そんなにがっかりされると、僕が悪いことをした気分になってしまう。僕は開かれた手にそっと、シロツメクサで作った指輪を名前の指にはめた。ピッタリとそれは名前の指にはまった。一瞬、僕のほうを凝視して動かなくなった名前が全てを理解したらしく真っ赤になって俯いた。いつか、本物を名前にプレゼントしてあげるからね。

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