成神



隣にいる私よりも小さな男の子のヘッドフォンから流れるシャカシャカという音漏れに私は顔をしかめた。車両内は何故か人がまばらで殆ど席が空いている。それなのにも関わらずこの小さな男の子は、私の隣にどっかりと腰を下ろしたのだ。それがほんの、数分前の話。車内ではお静かに〜みたいな声が流れているのにも関わらずヘッドフォンをつけた彼の耳には届かない。隣に座っている男の子はうつらうつらと、眠たそうにしている。やがて、瞼をゆっくりと閉じ、安心しきったように私の肩にもたれかかってきた。耳元でこんな大音量が流れているのに、よく眠れるなぁ、と感心する。きっと、部活か何かで疲れているのだろう。そう思うとなんだか少し可愛く思えてくる。



とはいえ、私の降りる駅はもうすぐそこなのだ。このままでは、この子を起こさなければならなくなる。周りに助けを乞うように視線を向ければ、いつのまにか殆どの人が降りていて、人がいなくなっていた。私はがっくりと項垂れた。わずかに残っていた乗客に助けを求める視線を送ると、視線を逸らされた。……冷たい。



ガタンと電車が揺れるたびに男の子と私の体躯が揺れる。そのたびに、男の子のふわふわした色素の薄い紫色の髪の毛が、頬に触れてとてもくすぐったい。アナウンスが次の駅名を告げる。うわわ、それ私の降りる駅じゃないか!し、しかし……隣のあどけない顔をした男の子を見て、私は起こすのが可哀想だと思ってしまった。しょ、ショタコンじゃないよ!音楽の音は相変わらずとても煩い、知らないアーティスのものだ。永遠とループして流れ続ける。電車のドアが閉まったのを合図に私も諦めて、目を閉じた。

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