百合ではありません



5万の別の配役のパターン。ただし、一部は変動なし。例によって喜多落ち



むかしむかし、あるところに名前という娘がおりました。娘は義理の兄弟(といっても、もう一人は良心的なので西野空だけ)に苛められておりました。今日も、自分の部屋の掃除の仕方が甘いと名前をいびります。ああ、可哀想な名前。「悪いな……名前なんで、西野空がああなのか俺にはわからないんだけど。良く言って聞かせておくから。心配するんじゃねぇぞ」安藤が優しく名前の頭を撫でつけて西野空を叱ります。西野空は堪えていないのか口笛を軽く吹いて興味なさ気です。「あ、僕の部屋ちゃーんと掃除しておくんだよぉ。あと、僕の服クリーニング出しておいてぇ。お城行くからさぁ、喜多たちのもやるんだよ。お前は何も出来ないんだからさぁ!少しくらい役に……いっ!」「馬鹿の空!いい加減にしろ!悪いな、城に行くのは本当なんだ。名前も行けるようにしておくからな?美味しいもの食べに行こうな。ほら、馬鹿の空!お前はさっさと自分でクリーニングに出しに行くんだ!」安藤が西野空を叱咤して、普段よりよっぽど洒落た自分の洋服と喜多の洋服を抱えて出て行きました。西野空もはーいと気の抜けた声で返事をして自分の服を抱えてぴしゃりとドアを閉めて出て行きました。名前がピリピリした空気を抜けてようやく気を楽にした息を吐きました。



事情を知らない一番上の兄弟、喜多が帰ってきました。スンスンと泣いている名前に対して話しかけます。「どうした?何処か痛いのか?薬を探しにいこう」「違うんです、西野空君がどうして、私をあんなに嫌うのか。そう思うと胸が苦しくて、私何かしたんでしょうか」喜多はそう聞くと、難しそうな顔をして言いました。喜多は安藤が居ないときによく西野空から庇ってくれるので名前は喜多が大好きでした。「いいや、あれは違うよ。君が好きなんだ。だから、あんな態度しか取れないのさ」「そんなの嘘ですよ」一向にそんな言葉は信じたくないと言わんばかりの態度ですが喜多は気にせずに言葉をつづけました。「いいや、俺には気持ちがわかるから。あれはそうなんだよ」自信ありげの様子でそう答えたので名前が首を可愛らしげに傾げました。「お慕いしている方でもいらっしゃるのですか?」「そうじゃない、って……いや、そうなんだけども」喜多のどっちつかずの回答に名前も惑乱してしまいます。果たしてどちらなのか、と喜多に問えば恥ずかしげに答えました。



「俺は君が、名前が好きなんだ。兄弟は似るって本当だな。西野空も俺も名前が好きなんだよ」「えっ、あ、あ「ただいまぁー」丁度、タイミング悪く西野空と安藤が帰宅しました。二人とも縮まっていた距離を素早く離して二人におかえりと迎えました。「ほらよ、喜多。クリーニング急いでやってもらったよ、まあ、怒られたけどな。なんで今日中なんだよって」「あ、ああ……すまない。有難う」喜多が引き攣った笑顔で、クリーニングされた服を受け取りました。ほんのり暖かいそれに、瞳を落とします。「……ほらあ、名前の分も買ってきてあげたんだからぁ、僕に感謝すればぁ?」「えっ、で……でも、私はいけないって……」そうです。先ほどまで意地悪気に笑っていた西野空がお前は連れて行かないからなぁって言っていたのです。「馬鹿じゃないのぉ?お前だけ残したら隼総が怒るだろぉ。でも行きたくないなら勝手にすればぁ」そう言って、名前に綺麗なドレスを渡すのを拒んで何処かへ行ってしまいました。「あの馬鹿の空め!」安藤はそんな西野空を追いかけていきました。



その日の夜今日会った出来事をおさらいするように思い返していました。一人、暖炉のそばで溜息をつきます。すると灰の散らばっているそこがキラキラと光り始めて魔法使いの星降が現れました。「こんばんは、お嬢さん。西野空のツンデレ具合にはついて行けないね。俺もついて行けない。今回は西野空が買ってきちゃったから俺の出番はないけど。……明日多分、くれるんじゃないかなドレス。折角だし喜多と話す機会をあげようか」そう言って、小さな星をあしらったステッキをくるくる円でも描くように何度も降ると寝ぼけた喜多がやってきました。星降を見ても然程驚かずにいないもののように話しかけます。星降は小さく片目を瞑ってウィンクをして姿を掻き消しました。「まだ、起きていたのか。明日は早いぞ……?」「ええ、今日喜多君が言っていたことを考えて居まして」喜多がそれにハッとした様に息を飲み込みました。「あの事か……。本当に俺は名前が好きだ。西野空から何度も庇ってきたのだってそういうこともあるから」「……私も、そんな優しい喜多君が好きでした」「有難う……俺、明日は家に残ることにするよ。名前のいないパーティに意味は無い」「じゃ、じゃあ、私も明日残ります!お城には行けなくていいです」名前も張り合うように喜多に対して宣言しました。二人して苦笑します。



「ということで、俺と名前は居残りでいい。留守番もいないと物騒だろう?最近」「ま、まあ、そうだけど。無理しなくていいんだぜ?」安藤が二人を気に掛けるように、言いました。「いえ、私お家にいます。いってらっしゃい」「馬鹿じゃないのぉ……ふん、」西野空が一度、嘆息をつくように息を吐きました。二人して何度も後ろを振り返りながらお城へと向かいました。「これで、二人きりだな」喜多が少々、黒い笑顔を見せました。「ところで、この場合は百合にはならないよな?」大丈夫です。



パターンB:義理の一番上の姉(?)との恋

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