日記帳



!どうしようもない鬼道さんしかいません。


鬼道さんの家に遊びに来ました。広くて、眩暈がしそうでした。なぜか他人の家って、綺麗に見える。多分となりの芝が青いだけなんだろうけど。鬼道さんがゴーグル越しに目を細めて「今度はお前の家にも遊びに行かせてくれ」といっていた。構わないんだけれど……あまり綺麗じゃないし、幻滅されるんじゃないかという危惧もしている。悪いけれど、多分、普通の女子の部屋より質素で可愛げが無くて、面白みにかけると思う。そして、今鬼道はジュースを持ってくると口元にいつもの笑顔を浮かべて見せて部屋を退室した。残された私はキョロキョロとあたりを見回していたのだが、机の上に乗っているノートを見つけて無造作におかれていたそれに、私は息を飲む。未知の物に触れるとドキドキと心臓が高鳴るのを感じた。いやいや、駄目だろう。駄目だ、駄目だ。だって、これの持ち主は今部屋には居ないし許可を貰ったわけでもない。こんなの彼女でも許されるものではない。




ゴクリとつばが喉を通っていった。口が渇いているのを感じる。……若しかしたら、今日の宿題かもしれない。という邪念が頭を掠めていた。そもそも今日鬼道の家に遊びに来た理由は「宿題を一緒に消化する」だったからだ。鬼道は頭がいい。もう終わっていても不思議ではない。「……」ペラリ、と無言で一ページめくった。少し写すの位構わないだろう。という魂胆だった。しかし、めくって数秒もたたないうちにこれが宿題ではなくて日記だと気がついたのだった。「なんだ……」私が目に見えて落胆して、ページを閉じようとしたときだった。「ん?」なんか見ちゃいけないものを見てしまった気がした。ノートに名前と書いてあるのが見えたからだ。それに私は閉じる手を止めた。見てはいけない、と思いつつも目が文字を追ってしまう。



×月△日 晴れ

今日も名前はとても可愛い。
春奈と喋っていたのを見た。春奈×名前……ハァハァ。
俺じゃなくても……これもこれで、ありだ……。
い、いや、名前×春奈も捨てがたい。
と……兎に角春奈と名前は俺にとって天使だ。


×月☆日 曇り

今日は生憎の曇り空だ。本当に気が滅入る。
だが、名前の笑顔は本当に可愛らしい。
出来れば、俺が夜にでも泣かせてやりたいくらいだ。
書いていたら、なんだかむらむらしてきた。


★月*日 晴れ

今日は名前が職員室に資料を運んでいたときに
転んだ、そのとき見てしまった。
……ピンクだった……。名前には何色も似合うと思うが
俺的には、やはり白だな。ストライプでもありだ。
今度、下着でも買いに行くのもいいと思った。



「……」まだ続きがあるようだったが私は無言で、日記帳を閉じた。これ以上みたいとは思わなかった。というか、妹さんと私をそんな酷い目で見ていたんだ。という失望感があった。シスコンだとは前々から思っていたけれど……。某Gさんと同じ匂いを感じていたけれど……。なんだろう、妹離れできない人々の独特の感覚……?みたいなのが鬼道にあったのは薄々感づいていたが此処まで酷いのか。元の定位置に戻り座るとほぼ同時に、ドアが開いた。片手をお盆で塞がれた鬼道が帰ってきた。ばれたか?と少しだけ、嫌な汗をかいてしまった。酷く困惑している。「待たせたな」いつものように冷静な口ぶりで言う。……例のあれもあって、私は少し心臓がはねた。冷静を装いながら普通に「おかえり」と返す。なんかいつもと違って上ずった声だったような気がしたが鬼道が普通に接してくるので気のせいだったんだな、と思った。鬼道を見る目は先程とは違うのは言うまでも無く。あれを見て今までと同じように接せられる人は、ある意味尊敬できる。私は無理だ。ほら、一般人だから……。平静を取り戻せない。



今、私の心を占めているのは……勿論、先程の日記帳のことで。当たり前だが、日記帳を勝手に見たことはいえるはずも無い。なぜなら、それは私に非があるからだ。日記帳だとは思っていなかったとはいえ……見てしまった。ただ……思うことは、このまま付き合ったままでいいのだろうか……ということである。彼はむっつりだ。ああ、悲しいけれど、否定は出来ない。思春期男子特有のあれで、脳内は真っピンク色に染まっているんだ。違いない。私はいろんな言葉を飲み込みながら彼が持ってきてくれた、オレンジジュースをすすった。

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