妄想癖



キャラ崩壊


雀が可愛らしく鳴いていた。まるで、会話しているように聞こえるくらいだ。周りはもう半袖の人もまばらだ。あぁ、もう秋なのか。通りで涼しくなってきたわけだ。「名前先輩!おはようございます」たまたま登校している時間が一緒だったのか後輩の成神が声をかけてきた。正直、素行があまりよろしくないため「げっ……」といいそうになってしまった。そこを何とか堪えて普通に返す私。落ち着け、私、相手は後輩だ、暴力は駄目……!「お……おはよう、成神君。早いね〜」相変わらずヘッドフォンをつけている。普通に挨拶して聞こえるのだろうか。と、思いつつも挨拶をする。笑顔は多分引きつっていると思う。「先輩、皆の前で、そんな恥ずかしい……。結婚しようだなんて、俺たちまだ中学生ですよ?」



あー……やっぱり聞こえませんよね。ってか、耳悪いな。こいつ。「……そんなこと言ってないよ?そのヘッドフォン取ろう?そして、耳鼻科いけ」私がヘッドフォンに手をかけようとすると成神は素早く回避した。「や、やめてください……っ。先輩、此処学校ですよ!先輩はそういう趣味ですか?」どういうわけか、成神の頬が少し朱色に染まった。それを見てこちらも手を引いた。今の私には理解できない。いや、永遠に理解できない。否、できなくていい。歩く十八禁かお前は……。もう駄目だ、誰か病院を……早くこいつを連れて行って……!え?もう、手遅れ……?そんな馬鹿な。まだ間に合うだろう?!登校している生徒の視線がこちらに集中しているのに気がついて私は成神を置いていくことにした。



「きりがないから、先に行くね。まじで耳鼻科行ったほうがいいよ。色々やばいのかも」頭とか、耳とか色々。私が冷静に、成神にアドバイスすると成神は頷いた。あ、よかった。この言葉だけ通じたのか。報われたな、私。「そうですね、確かに子供は沢山欲しいですね。俺、頑張りますね」……あぁ、そうですよね。通じませんよね。期待なんて、していませんとも。その笑顔が純粋なものだったならば、私はどれだけ幸せなんだろうか。み、認めないぞ……。そんな笑顔は純粋なんかじゃないんだからな!兎に角、成神から離れようと成神に背を向けて走った。横腹が痛くなってきたあたりで普通に歩き出す。流石についてきていないだろうと後ろを振り向くと奴が後ろにぴったりとくっついていた。息が乱れている私とは対照的に奴は息ひとつ乱れていなかった。……畜生、サッカーやっているから、私に追いつくなんて楽勝だってか。



「ハァ、なんで……ついてくる……ハァ……わけ……?ゲホゲホッ」聞いて居る最中に咳き込む、私の背中を成神が摩ってくれた。や、優しい……。「えと、式場のことも考えないと、と思いまして」あとは言葉が通じれば完璧なのに、天は二物を与えずってこのことか。「どうして、そうなる。なんで通じないんだ。てか……都合のいいように解釈するな!」「先輩、俺、必ず幸せにします!まずは先輩の両親に挨拶が先ですね」「何をいっても無駄かもしれないけれど私は年上が好みなんだ」やっぱり、私の言うことなんて聞こえてない……いや、正確には自分の都合のいいようにしか聞こえていないらしく、自分の世界に浸っていた。成神と会話するこつを同じ部活の人に伝授してもらえないだろうか。普段どうやって会話しているの?このままじゃ一生、まともな会話ができない。


考え事をしていたら、成神は私の両手をがっちりと握ってきた。さっき走ったせいでこいつをどうにかする力も残っていなかった。

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