友達ごっこ



冬花が思っているそれは私が抱いているそれ、とは違うなんてこととっくの昔に知っていた。冬花が私に抱いている感情はこんな気持ちの悪いどろどろした感情なんかじゃなくて、もっと綺麗なものだったのだから。そんなの知っているよ、何度も何度も自分に言い聞かせた。だけど、そんなことで私が諦めてくれるわけもなくて。心を黒く巣食っていて自分で制御できることができなくなってきていた。好きで好きで好きで、恋しくて恋しくて恋しくて。どうにかなってしまいそうだった。嫌、もういっそどうにかなってしまったほうがいいのかもしれない。



同性を好きになった、私を冬花はどんな目でみるのだろう?陳腐すぎる恋愛映画じゃあるまい。きっと、この関係もおしまいだろう。「冬花は、今日も可愛いね」よしよしと、冬花の髪を優しく撫ぜる。私とは違う冬花の匂いがする。女の子同士だからこうやることもできる。本当に本当に本心なのに、どうしても冗談交じりでしかいえなくて伝わらない。肝心なものは何一つ伝わってはいない。冬花は照れたようにはにかむ。私はこの表情が大好きで仕方がなくて。「っ……そ、そんなことないよ」って、いつもと同じような決まりきった台詞を言う。冬花は可愛いよ、私が今まで見てきたどんな女の子よりも可愛い。



「冬花、好きだよ」冗談が混じったような、口調で笑う。「あ、有難う……。私も、だよ……」気恥ずかしいのか、うっすらと頬を紅潮させて冬花が言う。語尾は弱く、余程恥ずかしかったのだろう。あぁ、もうこれ以上私の心をかき乱さないでよ。だって、冬花の心の中に私は居ないのでしょう?苦しいよ。


冬花、気づいている?
冬花が私を一番苦しめているってこと。
そして、私が冬花を世界で一番愛しているってこと。

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