幻覚



誹謗中傷目的で作品は書いてません。



目を開ければいつも酷く醜い現実が、私を待っていた。夢ならばいいのに、と思っていたのに白い壁に囲まれた此処は本当に気が狂いそうだ。私はどこも可笑しくなくて、まともなのになんでこんな白い場所に私は閉じ込められなければならないのだろう。ああ、今日も隣の人はうざい。何をぶつぶつ言っているんだろう、徘徊も程ほどにして欲しいものだ。監視カメラが相変わらず私を見ていた。ジーっと、何が楽しいのかわからないけれど。壊しても壊しても、常に誰かに監視されているからもう、諦めた。


それにしても、啓はまだ来ないのかなぁ。つまらないんだよ、此処。啓がいなかったら本当地獄のような毎日で。ご飯は毒が盛ってあるような気がして食べたくないし、薬、とか言われた白い錠剤は私を殺すために出している毒にしか思えない。ああ、啓、啓、啓!会いたいよ!「名前、大丈夫だった?」気配がなかったことに驚きながら振り向くと、口元に曲線を描いた啓が立っていた。窓を見ると窓が開いていた。ああ、いつものように窓から入ってきたんだ、と私は直感した。啓は私を心配そうに見据えた。「啓!啓!会いたかったよ!」「少しやつれた?僕が出して上げられればいいんだけどね」



私に近づいて頬を撫でる。啓だけが私がまともだということを理解してくれている。啓だけはほしい言葉をくれる。啓がいなければ私も今頃この隣の人のように、頭が可笑しくなって徘徊とかしていたかもしれない。そう思うと彼には感謝せずにはいられなかった。啓の隣に寄り添いながら、私は少しだけ欠伸をした。「あれ、眠たそうだね」「ああ……うん。隣の人が煩くて眠れないの」そういって隣の人に少しだけ視線をずらすと、啓は納得したように頷いた。そしてベッドに寝るように促した。「じゃあ、僕が寝るまでいてあげるから……少し寝たほうがいいよ」「うん。有難う」私は、ゆっくりと目を閉じる。啓が私の瞼に優しく触れる。ああ、啓大好きだよ。啓。



現実

母親が呆然と、その光景を見つめていた。名前がずっと壁に話しかけていたのに視線を落として、涙ぐんだ瞳を拭った。此処は一人部屋だというのに、何故、娘は煩いというのか。酷い妄想に取り付かれた彼女に母親がしてあげられることは病院に入れて、少しでも早くこれを治してあげることだけだった。ゆっくりとコツコツ音をたてて、廊下を歩く。ただ、幸せそうに笑う娘が不憫でならなかった。

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