カーテンコールが終わるまでの二人




(・大会後も時々サンドリアスに遊びに行く夢主とカゼルマ(両片思い)が、互いに気持ちを伝えられない話)


私は、最初彼らの容貌に驚いた。それは悪い意味でだ。彼らは砂の惑星サンドリアスに住むサンドリアス人で、皮膚は固くこの荒れた土地でも生きて行けるようにとトカゲや爬虫類が進化したような見た目だったからだ。大抵の女子が苦手とする、あれだ。言葉には出さなかったが、恐らくカゼルマは気づいていたのだろうと思う。何故ならば私の目が恐怖を訴えかけていたからだ。カゼルマ達に比べて我々人間の体の脆弱な事。きっと、この惑星では生きて等行けないだろう。此処は水が極端に少なすぎるし、此処に風で煽られて叩きつけられる砂には肌を痛めるだろう。



しかし、彼らの容姿を恐れていた私にも変化が訪れた。そう、試合の時に見せたカゼルマの誇り高き精神を見た私は、憧憬と共に別に何かがくすぶっているのを感じた。それは恋だと、知るのに時間はかからなかった。カゼルマと別れるときにこれで永遠にお別れ化と思った時にツキン、と胸が痛んだからだ。そして、何度でも逢いたいと思ったし、同時に彼の傍にずっと寄り添って生きていけたらなと心から願った。そんな願いも虚しく私たちは、次の惑星へと試合に出るのだが。全て終わった後になんと、奇跡的にもこの宇宙船で行き来してもいいと言ってもらえたのだ。勿論、サンドリアスに向かうのは一人の事が多かったが。



歓迎などしてもらえないかもしれない。いや、寧ろ恐れた私を軽蔑の眼差しでカゼルマは見るのだろうか?上辺だけならいくらでも取り繕えるだろう。優しい彼の事だ、いつも顔には出さずに出迎えてくれる。それから、些細(くだらないとも言える)な事を話して胸をときめかせて。ただ、一緒に居られるだけで、傍に居られるだけで幸せな気持ちに成れる。こんな気持ちは初めてだった。だけど、言えなかった。今日も言えなかったし、これからも若しかしたら言えないかもしれない。たった、二言「好き」という言葉を紡ぐことは。



ただでさえ、異星人同士なのに。きっと、カゼルマだって同じ惑星の人を好きに成るだろう。私なんてカゼルマの目になんか映らない。どんなに綺麗に着飾ろうとも私の醜い心に気が付いているカゼルマは、私なんかよりも同じサンドリアスに住む、美しい穢れなき心を持つ誇り高き女性を選ぶ。



最初に出会った時に見せた表情は畏怖を孕んでいた。それがあまりにも気の毒で仕方がなかった。そして、私は恐れられる存在であると知った時、体に電気ショックをあてられたかのように衝撃を受けたのを覚えている。私は特別、サンドリアスで醜いと言われる容姿をしているわけではない。ましてや、恐れられたことは無かった。彼女はとても柔らかな皮膚をしていて、私と接触すればその柔肌を傷つけてしまうだろうと想像に容易かった。というわけで、最初の出会いと言うのは最悪そのものであっただろう。だけど、彼女の接触が変わったのは我々サンドリアスが負けてからだった。その頬を薄桃色に染めて、私に握手を求めてきたのだ。



私は、その柔肌に触れた時に甘い痺れを感じた。彼女の隣には神童と呼ばれた少年が居て、とてもお似合いだった。それは切なくて、だけど、決して嫌な物では無くて。それが“恋”だと気付くのには然程時間を要さなかった。サンドリアスは負けたけれど我々の誇りは失われず、尚且つ、アースイレブンはこの宇宙を救ったのだ。その中には彼女が含まれている、名前……名前を呼ぶのすらこの私には躊躇われてしまう。私は、私は。名前を愛している。この宇宙の誰よりも。星の危機を救った英雄の名前に恋をしている。実らない恋だ。



されども、彼女はこの星がいたく気に入ったのか何度も訪れてくれる。私はそのたびに、勘違いをしてしまうのだ(ああ、勘違いも甚だしい、されども)。名前は私の事を誇り高い戦士だと褒め称えてくれる。そして、手を重ねて。触れ合う、そこに熱が生じて、甘い陶酔と共に錯覚を覚えてしまう。私の容姿を見て怯えていたはずの名前が私の事を愛してくれているのではないかと言う事を。私は口が裂けても口になど出せなかった。きっと、勘違いなのだ。こんなにも見た目の違う我々が恋になど落ちるわけがないのだ。ああ、だけど、……この温もりだけ、今は本物だと信じさせてくれ。

Title カカリア

あとがき

カゼルマは格好いいと思います。女の子は途中で、誇り高い精神に惚れればいいとおもいます。


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