パワフルデイズ!




(・木暮のいたずらに引っかからない女の子と1年生組(木暮、春奈、壁山、栗松、立向居等)でほのぼのとしたお話)


木暮は大の悪戯好きだ。音無なんかは格好の餌食に成っている。その他の人だって、大体は引っかかってくれる。木暮にとっては面白い程に、想定の範囲内の反応を返してくれる。それが愉快で堪らなかったのだが、どうしても引っかからない相手が一人だけいる。その子は同じ一年の名字と言うやや小柄な少女なのだが。ちぃっとも、木暮の思惑通りに動いてくれなくて小暮はこういう時だけ働く狡賢い脳をフルに活動させて、知恵を絞りだすのだ。今日はスタンダードに蛙を手のひらに軽く収めて、おやつをあげるといって忍ばせようかと、原点回帰することに決めたようだった。「イッシッシ、女子って蛙大嫌いだもんなぁ〜!今から楽しみだ〜!」


「春奈ちゃん、有難う」「いえいえ!水分補給って一番大事ですからね!」スポーツドリンクを片手に喉を鳴らして、冷たい液体を体内に送り込んでいた所。木暮が今日こそはと決意を固めてやってきた。「甘い物も大事だよな?お菓子あげるよー?」背丈の小さな木暮に対して少しだけ屈んで名字が返答する。「要らない、どうせ、その手にはろくでもない物が入っているからね。木暮、知恵が足りないよ?」「ええっ、そんなことは「ゲコッ」無いと言おうとしたところで手のひらの中に納まっている蛙が小さく鳴いた。しかし、それはその場にいた、音無や名字の耳にも届いてしまうだけの声量はあったようだ。「ほら、ろくでもない」「ひっ!か、蛙?!」音無はすっかり、腰を抜かしてしまいへなへなとその場に頽れてしまった。「ば、バレたか……撤収〜!イッシッシ〜!」最後に置き土産だと言わんばかりに音無の方へ向けて蛙を放つものだから音無は悲鳴を上げてしまって、それを何とかしてやるのに名字が少し苦労したくらいだった。



「立向居君は流石だなぁ、努力家だし。今日もあまり点を取らせてもらえなくて残念だよ」「そ、そうですかね?えへへ、照れるなぁ」タオルでお互い軽く汗を拭きながらも今日の練習結果に満足な様子で語り合う。そこに栗松も加入して「いやー、オイラも頑張っているつもりヤンスけど……」更に盛り上がり話に花が咲く。そこにやってきたトラブルメイカー木暮。今日は水筒を持ってきて居るようだ。「珍しいでヤンスね?」「いやぁー、お茶もたまにはいいかなーって」内心では邪な笑顔を浮かべているが此処ではまだ、しおらしく。「皆も飲む?練習後で疲れているでしょ?」そう言って紙カップを四人分出して、注ぐ。茶色い液体はよく冷えているようで、カップを受け取った立向居と栗松は一口飲んだ。そして、ぶーっと宙に向けてその液体を噴射した。



「イッシッシ〜!中は麺つゆだよ〜!って、あれ?名字は飲まなかったのか……?」「……まぁ、普通に怪しくて飲まないよね。匂いの時点で、麦茶とかの類ではない事はわかったし」一人引っかからなかった人物が一人。途端に面白そうだった木暮の顔が曇って、あっかんべーをして、走りながら叫んだ。「今に見ていろー!お前の事もひっかけてやるんだからな!イッシッシ〜!」完全な捨て台詞に成っている事には気が付いていないようだが名字は息を吐いて、やれやれと肩を竦めて麺つゆがなみなみと注がれた紙コップを流しに捨てた。二人も続いて、紙コップの中身を流しに流していた。それから、口直しと言わんばかりに二人して水道水を美味しそうにごくごくと飲んでいた。



「本当に凄いですよねぇ……何で悪戯に引っかからないんですか?」「オイラもその秘訣しりたいでヤンスね……、麺つゆとっても濃くて吹き出しちゃったでヤンス」二人とも名字に対して尊敬のまなざしを向けていた。そのキラキラとした眼差しに、また溜息を吐いた。「木暮が真面に、今まで何かくれたことなんかあった?」「ハッ、な、無いかも……」「も、盲点だったでヤンス……!でも、いつも何だかんだで受け取ってしまう……悲しい性でヤンスね」栗松がやけに深刻そうに眉を下げて呟いた。名字にしてみれば、小暮の悪戯は避けようのある物で寧ろ毎回ご丁寧に引っかかってしまう側の人間が不思議であった。「いやいや、私が特殊なわけじゃないからね?」



その日木暮は、新しい作戦を練って浮き足立っていた。だからかもしれない、盛大に大きな石に足を取られて、派手にずっこけてしまった。「木暮?大丈夫?」「イテテ、」まだ、蜘蛛の玩具は無事だ。だけど、それより盛大にすりむいてしまった膝小僧がジンジンと痛みだしている。此処で名字を騙してもいい、躓いてしまったのは逆手にとってやろうと考えた木暮はその蜘蛛をそっと手の平に忍び込ませてちょっと大きめの声量で言った。「名字〜、絆創膏と傷薬ある?」「あるけど……」そう言って近づいた瞬間、現れた蜘蛛の玩具。名字は苦笑した。「あはは、やけに浮き足立っていたから、知っていたけど逆手に取るかー。そこは素直に、諦めればいいじゃないか」「げっ、知っていたわけ?!」驚愕する木暮の膝小僧に思いきり傷薬を吹きかけてやると、凄く痛々しい赤色が濡れて木暮が悲鳴をあげた。全く、名字は勝てない木暮であったがこれからもリベンジするつもりのようだ。

Title 箱庭

あとがき

ほのぼのしていますかね…?淡々としているような気がしますが……。


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