まだ見ぬ未来にHello,Hello




(・呂布に尊敬と愛情の混じった感情を抱いている夢主)


私は呂布様を尊敬している。誰にも屈しないその闘志に燃えた鋭い瞳に惹きこまれてやまなかった。誰にも負けない劣らない呂布様だけが神に賜った武には息を飲込むほどであった。荒々しさの中に確固とした強さが有るのだ。私はそれに倣って、武の道へと進んだのだがどうにもこの世の中、女の私が戦うというのはまだまだ風当たりが強かった。それでも、呂布様は珍しさもあるのか、雑魚だが根気があるようだな。と褒めてくださった。そのことが何よりも、心の支えであり、私が未だに戦場に立ち続ける理由でもあった。私にとって、武とは何なのかと問われたら呂布様の背中をいつまでも追い続けていたいからと答えるだろう。何処までも、追いつけない広く逞しい背中。



呂布様は一人で大勢を相手に圧倒するのだが、私は未だに慣れない獲物を携えて、呂布様のお傍で戦うことに専念する。私は、呂布様にとっては今一頼りの無い一般兵なのだろう。だけど、この時が至福の時だった。私と呂布様では武では男と女と言うのもあるからか差が、大きく開いている為、相手にもしてもらえないのだが、戦の時はこうしてほんの僅かでも役にたてる。道具に成り下がってもいい、呂布様の為ならば私は厭わないだろう。一一般兵としてでも扱ってくれることが嬉しかった。「雑魚が!」不意に、怒声が聞こえてきた。時が微量一瞬だけ息をするのをやめた。薙ぎ払われた矢が、地面に落ちて役割を放棄していた。私は間一髪で生きていたのだ。「あ、有難うございます……!呂布様!」私は瞬時に助けられたのだと悟ったのだ。心臓が凍りついて氷解するのには時間がかかりそうだ。それくらい、肝を冷やしたのだった。



「ふん、目の前に集中しすぎだ。己の技量を知っているのならば、周りに注意を払え!此処は戦場だぞ!」「は、はい!」厳しい言葉を投げかけられているのは知っているが、呂布様は優しさを見せることが少ない、これは呂布様なりの不器用な優しさなのだ。それは私だけが知っている事。普通の人間ならば花が手折られるように心も折れるそうだが。私はそうは思わない。何故ならば呂布様は私を助けてくれたから。気まぐれかもしれない、それはわかっているつもりだけど、嬉しさだけが込み上げてきて、そんなことどうでも良くなってしまうのだ。



だけど、呂布様の一番は私なんかではない。やがて、伝令兵が息を切らせてやってきて「伝令!貂蝉様が「何?!貂蝉っ!無茶はするなと、あれほど……!」そう言って赤兎馬に跨り、呂布様は赤兎馬の腹を蹴った。そう、私はただの一般兵に過ぎやしない。傾国の美女でもなければ、地位も何もない、ただの一般兵の女だ。それに比べて貂蝉様はお美しい方で……何を考えているのかはわからないのだが、呂布様や董卓様にいたく気に入られている。私も一般兵などでなければ、呂布様にあれ程心配して貰えたのだろうか?私が貂蝉様だったら、呂布様に寵愛していただけたのだろうか?



わけのわからない感情に振り回されながら、私は泣きたくなるくらいの蒼天を見上げた。涙は零さない。私は一番で無くてもいいし、戦に身を置く物として一般兵として見て貰えるだけ幸せじゃぁないか。そう言い聞かせる。だけど、心が納得してくれないのだ。いつから私はこんな我が儘な人間に成ってしまったのだろう?土台、無理なお話なのだ。貂蝉様と私を天秤にかけたところで、つり合いが取れていない。どんなに化粧を施してみても、あのように美しくは成れない。こんなにも晴れ渡っているというのに心は、土砂降りの雨だ。暫く止みそうにない。



戦が終結したときに、赤兎馬と貂蝉様を連れ戻ってきた呂布様に儀礼的な挨拶をする。顔が曇っていたのかもしれない、貂蝉様が何気なしに(或いはこの感情の名前をご存じなのか)そっと耳打ちをした。その美しい顔を歪めて。「わたくしのせいで、貴女を置いてけぼりにしてしまったと呂布様は罪悪感を抱いていらっしゃいます……」「え、」その言葉に弾かれたように呂布様に視線を移す、だが呂布様の意思はわからない。何故ならもう背を向けてとっくの前を歩いていたからだ。背が大きい分、歩幅も大きいのだろう。私等では、小走りしなければ追いつけない。現にそれを伝えた後の貂蝉様は「お待ちに成ってくださいませ」と鈴を転がしたような声で小走り気味にその背を追いかけた。呂布様は貂蝉様の前ではいつもの眉間にしわを寄せたような険しい顔から、優しい顔に作り替える。「ああ、すまない。名前と話していたようだったからな。俺が居ては邪魔かと」「そんな事等ありません。名前さんは素晴らしいお友達ですけれども」そうはにかんでいる二人の姿は何だか、釣り合いが取れていて一枚の素晴らしい絵の様だった。私は、名前を知っていてくれたことに驚きながらも、少し疼痛が和らいだ気がした。未だこの感情にまだ、名前はない。

Title Mr.RUSSO

あとがき

貂蝉出してしまいました。悲恋気味ですが、ちょっと呂布も特別視していたらいいなと。


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