僕ら、恋をしていた




(・SARUに女の子として見てもらいたい夢主)


私にもサルは所謂、幼馴染だ。そして、珍しい事に二人してセカンドステージチルドレンとしての能力にほぼ同時期に目覚めたという。切っても切れない関係とは、この事を言うのだろうか?サルは私に「僕についてきてくれるかい?」という誘いに、乗った。披瀝すると、私はサルの事を男の子だと思って接している。だけど、サルはそうではないらしく、私の事を女の事として特別に扱ってきたことなんか無かった。いつだったか、それは、恐らくセカンドステージチルドレンとして目覚めたあたりから私は間違いなく、彼の事を男の子だと認識している。そして、特別な感情を抱いている。女の子は恋をすると可愛くなるとか、言う言葉嘘なんじゃないかなって思い始めている。



今日はサルに女子力を見せつけるために、クッキーを焼いて来た。サルがチョコレートクッキーを好きなのは昔から。そういう所を知っていられるのは、幼馴染の強みだと思うの(だけど、距離が近すぎて、見て貰えないの)。「サルー!クッキー焼いて来たよ」サルはそう言うと目を輝かせて本当かい?と尋ねてきたので良い匂いのするそれを差し出した。サルだって胃袋を掴まれれば少しは女の子として見てくれるはずなのだ。そうに決まっている、と思いたい。「ん、美味しい。まだ温かいね。最近疲れていたから、疲れが取れそうだ」普通の反応だった。……プラン変更。やっぱり女の子に見てもらうには形から入らねばならない。



「街の視察に行くんだけど、名前も来る?」サルからのお誘いはデートなんて可愛らしい物じゃなくて次は何処の街の襲撃をしようかという、物騒なお誘いだった。「ああ、ばれないようにちゃんと、古い人間のふりしていくからね」と言われたのでこうなったら此処で沢山女の子らしくめかし込んでいくぞ。と当日にふわふわの甘ったるい綿菓子を連想させるようなスカートと女の子らしく、お化粧を施して、サルと共に行った。街は私たちに気が付くことは無いが、少しは恋人らしく見えるかな?なんて、淡い期待を持ってしまった。なのに、サルときたら小声で「此処は防御が薄そうだね、襲撃の時は此処を狙おう」なんて、物騒な事を言っているだけで私の服装にもお化粧にも触れてもくれなかった。



どうしたら、サルは私の事を女の子として見てくれるんだろう?この恋心は届かないまま、サルの伴侶が見つかるのをただ黙って指を咥えて見ているつもり?そんなのは嫌だ。なのに、サルはこっちを見てくれない。私が幼馴染だから?女の子として見られないの?だったら、幼馴染なんてやめてしまいたい、託言の一つでも言いたくなってしまう。そう思ってサルの自室を訪れた。「サル、私……」「何だい?深刻そうな顔をして、誰かに虐められたのかい?」サルの目は嗜虐心を孕んでいて恐ろしい漆黒に塗りつぶされていた。「ううん、幼馴染をやめたいだけ」ギュッと服の裾を握りしめて、呟いた。外で吹く風の轟々と言う音に掻き消されそうな程微弱な声量だった。



サルの様子が一変した。「どうして?何で?」と私に詰め寄ってきた。私はサルの様子が今までこんな風に成ったのを見たことが無くて怖くて、心臓を彼に握られているようなキリキリとした痛みに呻きながら後ずさるだけだった。「どうして、逃げるの?僕が邪魔なの?」サルは笑っている口元だけ笑っている。「ねぇ、答えて」口調は、声音は非常に穏やかであったが、そこに暗がりのようなものが広がり蟠っていて、私は恐怖心をあおられるばかりだった。「だって、サルが、好き、だから」



その答えにサルはポカンと口を開けて、瞠目した。大きな黒い瞳に私が映り込んでいる。「あっはははははははは!なーんだ、最近様子が可笑しかったのはそれかい?」「様子?」てっきり、サルは何も感じていないし気付いていない物だと思っていたけれど、そうではなかったらしい。サルは言った。「急にお菓子を作って僕に差し入れてくれたりさ」あとはー、と言って私を壁際まで追い詰めて顔を近づけた。「街の視察に行ったとき、あの時は僕平然としていたけれど、心はそうではなかったよ。君があんまりにも可愛かったから、可笑しくなりそうだった」「えっ、それって……」サルはバチリと片目を器用に瞑って見せた。「名前本当可愛くなったよね。僕はずっと女の子として見ていたけれど、幼馴染って関係に甘えていたのかもしれない。だって、その方が楽だったから。名前の傍にずっと居られたから」だから、今日はとても肝を冷やしたよ、なんて茶目っ気に笑って見せてスゥと息を吸い込んだ。「僕から言わせてよ、名前の事が大好きだ」答えなんて決まりきっているのにサルは返事は?何て聞いてくるから私は必死に縦に頭を振るのが精いっぱいだった。今は恥ずかしくてサルの顔見られそうにない。


Title 箱庭

あとがき

女の子として見て貰いたい夢主を必死に書いてみたのですが、これじゃない感がありますね…。でも頑張ったので、見てくれると嬉しいです。


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