触れて抱き寄せて、他はいらない




(・稲妻SARUか無双曹丕or鍾会何かが理由で、くたびれているヒロインを相手が優しく慰めてくれたり愛を確かめる)


戦、戦続きですっかりくたくたである。それに加えて兵との鍛錬もあるし、竹簡の処理にも追われている。これをくたびれずに出来る人間がいるなら超人として崇めてしまいそうだ。今日は竹簡を、鍾会の元へ持っていくことに成っている。寝不足で、ふらつく足を引きずるようにして、回廊を歩いていく。えーと、鍾会の執務室は……、軽く手の甲で戸を叩く。「名前だけど、竹簡持ってきたよ」「ああ、入れ」鍾会も執務に追われているのか、素っ気ない声音で入れと言われた。入れと言われたので私は遠慮なく、戸を開けて鍾会の執務室に侵入する。竹簡を鍾会の机の上にどさりと山に成る様に置いて出て行こうとしたときにかっちりその整った顔についている双眸と目が合ってしまった。



私を見るなり慌てたような様子で「今、茶を用意する」と言って、立ち上がった。自分の執務はいいのだろうか?と思いつつ椅子に腰かけて待っていたら数分後くらいに湯気の立ったお茶を持った鍾会が帰ってきて、私に手渡した。「熱いから火傷するなよ」「はいはい」「はい、は一回でいい!」怒声を上げたが、そんなのお構いなしに、お茶に口を付ける。鍾会の入れるお茶は本当に美味しいから。ふーふーと、息を吹きかけて冷ましながらお茶を啜る。温かいお茶が胃まで到達すると温まってきた。「美味しい、流石鍾会」「ふっ、当たり前だ。私は英才教育を受けてきたからな」出た、鍾会の口癖。ふふっと自然と笑みが零れた。



「おっと、こんなことしている暇はなかったんだった」ごくごくと少し冷め始めてきたお茶を一気に飲み干して、慌てて自室に戻ろうとすると腕を引かれた。その痩躯に見える体には意外と筋肉がついているらしい。私の体は傾いて鍾会の腕の中にすっぽりと納まってしまった。「い、行くな」「何で?私はまだ仕事が沢山残っているんだけど」まだ、目を通していない竹簡は溜まっていく一方だし。と付け加えると鍾会の目が鋭くなった。「お前最近無理しているだろう、いいから黙って私の言う事を聞け」「無理なんか……」鍾会に弱い所を見られたくなくて、弱い女だなんて思われたくなくて言ったが「私は英才教育を受けているからな、これくらいお見通しだ。そ、それに……お前の事一番よく見ているからな……」と耳まで赤くして言った。最後の方は掠れていたため、本当に鍾会の言葉なのか怪しいが。



「さっきの茶には疲労回復の力がある」鍾会が得意げに説明しながら、私を仮眠できる寝台のある方面へと、背を押してくる。「ちょちょちょ、私は寝ないよ?」「煩い、言う事を聞け。名前は少し眠れ」そうこうしているうちに、抵抗も虚しく寝台についてしまった。鍾会の寝台は一人分だとは思えないくらいに広い。夜の遊興には興味がないと言っていたのでただ単に広いだけなのだろうが、勿体ないなあと思ってしまう。「さぁ、寝ろ」「行き成り言われても……」取りあえず仕方がないので寝台に横に成る。最近ろくに眠っても居ないので眠気が一気にぶわっと襲い掛かってくるのをこらえながら鍾会を見上げる。



「なんだ、一人では眠れないのか?仕方がない奴め」「そういうわけじゃ」無いという前に鍾会も私と同じように寝台に横に成って、私の隣に来た。密着する体に意識が眠気を飛ばす。「あの、鍾会、眠れなくなるんだけど」そう素直に訴えかければ、鍾会が私の頭の下に、腕を忍び込ませた。所謂腕枕の状態にしてきたのだ。どういうわけかさっぱりわからず瞠目していたら「こうしたほうが眠りやすいだろう、そ、その、特別に貸してやる」別に備え付けられたものでも十分だったのだけれど有難く借りようと思って、力を抜いた。「も、もっと、近づいてもいいのだぞ!わ、私は心が広いからな。多少自分が狭くても許せるだけの懐はある」



「何々ぃ〜?近づいてほしいわけ?」「そ、そんなわけないだろうっ!」プイ、と顔を背けてしまった。ちょっとした、諧謔のつもりだったので直ぐに甘えた様に鍾会の体に巻き付く様に抱き着いた。「鍾会〜」「なっ!なんだ!久しぶりに甘えてきおって、」私の心臓に悪いじゃないかとか呟く声が聞こえたような気がするけれど、そんなのどうでもよかった。今はただ、この空間で鍾会の熱に浮かされながら、鍾会を感じていたかった。「おい!ひっつきすぎだ!」「えー!」腕枕をしてきたのはそっちの癖に〜!とか言っていたら耳を赤くさせた鍾会が「無理はするなよな」と素直な言葉を吐いて来た。珍獣でも見る目で見ていたら、「お前があまりにも無理をするからだ!私を心配させるなよな!」と半ば自棄に成ったように言った。

Title リコリスの花束を

あとがき

鍾会さんにしました。曹丕さんでもサルでもよかったのですが、サルさんはリクエストが来たので。本当にお久しぶりです、有難うございます。


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