全ては君へと続いてる




(・ヤンデレで夢主に盲目なニケ)


私は心臓を捧げているの、あの子に捧げているの。私はあの子を愛している。今や、この世界では同性で付き合うなんて珍しい事ではない。だけど、やはり私たちという存在はとても希薄で、やはり主流は男女間の恋愛である。だからかもしれない、あの子が好きに成るのも必ず男だった。だけど、夢想するのだ。名前様が私を見て、触れて、その寵愛を得られるのであれば、それ程幸せなことは無い、と。名前様は今、ある男の事が好きだ。勿論、そいつの事を徹底的に調べ上げたから何でも知っている。本当に何の価値も無いような男だ。下らない、下らない。あの子に全く相応しくない(それは私も同じこと、私なんかが彼女の事を好きだなんてお笑い種よ、あの子はもっともっと崇高なる存在で、下賤で下等な存在である私たちが好意を寄せるだなんて烏滸がましいの、そうなの!)。



まずは、あの価値のないゴミのような男を名前様から引き離すことからスタートした。名前様に対して釣り合っていないあの男がいつまでも名前様から寵愛を得ようなど、酷く吐き気を催した。ガリ、指を噛む。どうやって、引き離そう?……、私は考えあぐねた。もう超能力も無いただの小娘な私。超能力があったならば、名前様を悲しませないように、秘密裏にそいつを処理しただろう。だけど、それが出来ない今、私は考えて頭脳で勝利しなければならない。どうする?どうする?頭の中がそれ一色に染まる。そして、弾き出された答え。「そうか……、簡単じゃないの」私たちの存在はマイノリティだった。だから、私はこうするしかなかったの。決してあの子が憎いだとか、見てくれないから恨めしいだとかそんなんじゃないの。私は、どんなに穢れてもいい。



それから、私はあの男に好かれる為に努力した。といっても、大したことはしていない。あの男に気のあるような素振を見せただけ。少し色目を使えば大抵の男は私に引っかかってくれる。こういう時だけ、こんな容姿に生んでくれたもう居ない親に感謝するのだった。そして、今回もうまくいった。その証拠に男に呼び出されて今、私は人気のない場所でそいつを待っている。といっても、あいつの下らないおままごとに付き合う為に此処にいるわけではない。あいつを排除するために此処にいる。チキチキ、カッターが音を立てた。超能力が使えない今、私はこうすることでしか奴を排除できない、ああ、ごめんなさい、名前様。私がこんなに非力でなければ、あんな虫けらから名前様をお守りできたのに。呼び出した男がのこのこやってきた。私は、鍛えてきた足で腹を蹴りあげた。ドサリ、重たい体重が地面に吸い込まれていくように、倒れた。ああ、なんて滑稽なの!それから、カッターをあいつの顔の横に突きたてた。「ひぃ!」情けない声が鼓膜を震わせた。なんて汚らわしいの!「もう、名前様に近づかないで。次は無いから。覚えておきなさい」男に隙を与えると男はよろめきながらも逃げ出していった。



あいつが名前様と私の目の前から失せてから、数日が経過した。名前様の元気の無さは直ぐに見て取れた。ああ、ああ!あんな下らない価値のないような男のでも、名前様は愛していたのだ。「……ニケは、知らないよね?何処に行った……とか」「さぁ、存じません」事実、あれからあいつが何処に行ったかなんて知らなかった。だから、丸っきりの嘘ではない。ただ、排除は行ったが。「そうだよね、」名前様が顔を曇らせ、影を作った。私は小さな背中を(あああ、私なんかが触れていい存在ではないのに)その穢れた手であやす様に擦った。「泣かないでください」「うぅ、ニケ……っ」光の粒が、光を照り返して。落ちてゆく。ポツリポツリ。ああ、なんて神々しいのだろう。そのお姿に見とれてしまって、私はその清らかな光の粒に口付けたくて。でも、必死に我慢をして(だって、私は触れてはいけないの。本当は、)。



「ニケ、ニケ」私の名前を、ああ、小鳥が囀る様に繰り返して。それだけで胸が締め付けられる。疼痛がする、眩暈がする。世界が倒錯し、色を付けていく。「ニケは、ずっと私といてくれるよね?」ああ、ああ!天使様が私を求めてくださった。そんなもの、聞かれずとも答えなんてとうの昔から決まっている。「勿論です、名前様」そういうと、その細くしなやかな腕が私を絡め取るように、抱きしめてくれたのだ。愛されていると錯覚を起こしてしまいそう!ねぇ、私、愛されていなくてもいいの!ただ、この触れた腕を、体を永遠に離したくない。「ニケ、有難う。私、貴女が好きよ」それが友愛であったとしても。私を痺れさせる猛毒に感じられた。



この世界を駆けまわったとしても、名前様にお似合いな人間なんて存在しない。誰もこのお方の隣に相応しくない。それは私とて、同じこと。ただ、私はひれ伏し崇拝するが如く、名前様のお隣を守れればいい。ただ、それだけでいい。ああ、愛しているだなんて、烏滸がましいの!


あとがき

盲目と言うか宗教レベルですね。


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