気付いたら君の幸せばかり願っている僕がいた




(・アンバランスなぼくらの続き、救いがある話)


僕にはあの子しかいないと思っていた。僕を思ってくれる人なんて居ないと思っていたから。だけど、あの日僕の送るよと言う言葉を拒絶し逃げる様に立ち去って行った名前ちゃんが僕の事を好きだったんだと、兄弟から聞いた。僕は呆然と立ち尽くした。あの日慰めてくれた名前ちゃんはどんな気持ちで僕を慰めてくれたんだろうとか、僕の見送りをどんな気持ちで途中まで一緒に居たのだろうと思うと、僕は疼痛がしてやまなかった。名前ちゃんは泣いたのだろうか。翌日にはいつもと変わらない笑顔を皆にふりまいていて、もう僕だけの笑顔じゃないんだって思うとなんだか苦しくて仕方がなかった。泣き腫らしたのだろうか、目が少し充血していた。僕は、僕は……。



あの子が好きだった気持ちは嘘なんかじゃない。だけど、その日から僕は名前ちゃんを見つめるように成った。とても、愚かしい事だけれども、好いてくれていた人間がこんなに近くにいたなんて僕には考えられなかった。そして、目で追ってはもう僕の事なんか好きじゃない名前ちゃんに苛立つようになった。なんで、そんな簡単に僕の事諦めちゃうの?僕の事なんてどうでもよかったの?ねぇ、教えてよ。僕、馬鹿だからわからないんだ。辿るは闇の道。段々と、僕の心は荒んで行った。僕は名前ちゃんを好きに成ってしまったのだと気が付いたのはこの頃だった。あの子の事も好きだった。だけど、今は名前ちゃんが大好き……。この気持ちは隠しておいた方が良いのかな?だって、もう名前ちゃんは僕の事なんてどうでもいいんだよ?



いつものように僕たちの家に遊びに来た名前ちゃんはお土産と言ってお菓子を皆に配った。勿論、僕にも。ぎこちない、笑顔だった。「名前ちゃん、あのね、今日は僕送るよ」今まで直向きに隠していた気持ち。もう抑えられないよ。僕は、そんなぎこちない笑顔を作るために居るわけじゃないんだ、教えてよ。今も僕の事ほんの少しでも好き?「あ、……いや、いいよ」断られた、けど僕は食い下がってその日は送ることに成った。日が暮れて夕闇が僕たちの家を包む頃名前ちゃんが帰ると言ったので僕も薄着でそのまま、名前ちゃんを送る準備をした。名前ちゃんとの帰り道、無言。僕となんか話したくないのかもしれない。僕はいつものように、芸をして笑わせようとした。けど、笑ってくれなくて、ぎこちなく作り笑いを浮かべていた。「有難う、十四松君」何が、有難うなんだろう?



「私が元気ないの知っていてそういうことしてくれているんだよね?」名前ちゃんは勘違いの言葉を吐きながら、笑顔の仮面を張り付けていた。僕は違うんだ、と呟いた。その言葉に目を円らかにして、「どういう意味?」と尋ねられた。僕はそのまま思っていることを言った。「僕の事、好きだって、兄弟から聞いたんだ!あのね!僕は、」「やめてよ!!同乗の言葉なんて要らない!」名前ちゃんが苦しげに叫んだ。どうして僕の言葉が嘘だと思って、僕の事を受け入れてくれないの?苦しいよ、苦しいよ。胸が、心が。「同情なんかじゃないっ!僕は名前ちゃんが好きなんだよっ!」言った、言ってしまった。名前ちゃんが歩いていた足を止めて屹立していた。



「へ?だって、あの子の事が……」「もう、それは過去の事だよっ!だってあの子はもう戻らない、僕が泣いたって喚いたって!近くにずっと思ってくれている人が居るなんて知らなかったから!僕、馬鹿だからっ!!」思いのたけをぶつければ、名前ちゃんがボロボロと泣きだしてしまった。ああ、名前ちゃんは曇天模様のようだ。「あのね、好きだよ!名前ちゃんはもう、僕の事嫌いかもしれないけれど!」泣き顔のまま、ぶんぶんと顔を横に振って「違うの、忘れたかったの。十四松君の事。じゃなきゃ、いつまでも苦しいままだから。他の人を好きに成りたかったの」そんなの僕は許せないよ。他の人?僕じゃない人?僕の知っている人?僕の知らない人?そんなのどうでもいいよ。僕の事ずっと好きでいてよ。



「僕、名前ちゃんが他の兄弟にも同じように笑顔を向けて僕だけぎこちない笑顔なの許せなかった!!」ぎゅーと屹立したまま順守しているの名前の体を痛い程抱きしめた。あの子にもしなかったこと。「十四松君の事まだ、好きでいていいの?」「当たり前っ!僕が大好きなんだからっ!」心変わりが早いって神様に怒られてしまうかもしれないけれど、僕の一番大事な女の子見つけたんだ。例え、それが許されない事だとしても、僕は名前ちゃんが大好きだ!「ぎゅーっ!」「恥ずかしいよ、十四松君」「名前ちゃんをこれから僕が独り占めにするんだからっ!」僕みたいな変わり者好きに成るなんて、本当名前ちゃんって変わっているよ。でも、そこも大好きなんだ。

Title カカリア

あとがき
あれをどうやって軌道修正するか迷いましたが、十四松君に本当に大事な人は近くにいたってことを教えることにしました。お気に召していただければ嬉しいです。


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