甘い毒に侵された心臓の幸福




(・軽くヤンデレな押せ押せ立向居くんにたじたじな年上(20代)夢主)


早朝、チャイムが連続で鳴る。私はこの相手を知っている、いつもの恒例行事に成りつつあるのだから、わからないって言う方が鈍感で、幸せなのかもしれない。モニターを見ずに、そのまま着替え終わっていたので、扉を開けて立向居君を迎えた。「お早うございます!名前さん!今日もお迎えに来ました!」「頼んでいないんだけどなぁ、」それに、私だって色々事情と言うものがあるのだ。彼との年齢差を考えてほしい。私は二十代のれっきとした大人で、彼は中学生である。なんで、こんなに懐かれたのかを思い返せば、私が黄昏て河川敷で練習していた立向居君をボーっと眺めて、終わったのを見計らって見学料としてスポーツドリンクを買って差し入れたことが原因だと思われる。つまり、私が悪いのだ。だからといって、この懐かれ方は異常だとは思うけれど。



「今日も俺と来てくれますよね!?」「あ、あ……うん、」そう答えるしかなかった彼の瞳にはたまに狂気が含まれている。それが恐ろしくも感じるのだ。朝早くに用意した弁当箱を二つ持って、河川敷までついていった。今日は練習目的ではないのだろうか、私の隣に座って、「この間居た、男誰ですか?」なんて聞いてくるので悪寒が走った。あの時、立向居君は居なかったはずだし、気配も感じなかった。「えっと、同僚?」そんな間柄だ。私には特別と思える男性は居ない。立向居君はほっとしたような表情で照れくさそうな仕草をしたあとに、私の肩に頭をこてっと預けてきた。「えへへ、名前さんの体温かい、俺幸せだなぁ。ずーっと、名前さんと居たい」「えっと、」私は口籠る。



中学生と言うのは恋に恋をしているのだ。盲目なのだ。私は大人だけど、立向居君は中学生だ。つまり、立向居君は勘違いをしているのだ。口を噤んでいた私は言葉を紡ぎ出した。「あのね、立向居君は、恋に恋をしているんだよ。私は大人だけど立向居君は中学生でしょう?」そう言うと立向居君は真摯な瞳を向けて「そんなはずはありません。名前さんにだって、俺の気持ちを、誤解だとか恋に恋をしているとかで片付けてほしくないんです。俺は本気なんですから。大人だとか、子供とか何が関係あるんですか?恋をしたら大人も、子供も関係ないんですよ。俺が大人に成ってもきっと、名前さんが大好きだ」噛むことも無く想いをまっすぐにぶつけてくる立向居君が少しだけ眩しく見えた。でも、立向居君が大人に成る頃には私はおばさんだ。それでも好きでいてくれるのだろうか?



「そうだ!お弁当食べましょう!ねっ?」立向居君は私がいつもお弁当を用意してきていることを知っている。私は溜息を吐きたいのを口の中で抑えて二人分用意してきたお弁当を立向居君にあげた。包みを開けてお弁当の蓋を開ける。「わあ、美味しそう!名前さんはきっといい、俺のお嫁さんに成りますね!」俺のと言う所は敢えて無視をして、自分のお弁当の蓋を開けた。そして、卵焼きに手を付ける。私は甘い卵焼きが好きなので、甘くしているのだが、立向居君は文句を言わないけど好き嫌いないんだろうか?と思っていたら、立向居君がウィンナーを一つ箸で摘まんで「名前さん、あーん」なんて突飛な事を言ってくるので、私は驚きで慌ててしまった。「名前さん?あーん、してくださいよ」二度目の言葉に私は折れて、口を小さくあーんと開けた。



ウィンナーが口に入ってくる。食べ物は大事なので仕方なく咀嚼をして飲込んだ。「ああ、名前さん、可愛い!俺の手から食べてくれるなんて……!」立向居君はうっとりと悦に入った顔をして、少し頬を朱色に染めていた。「俺、俺……っ。やっぱり、名前さんが大好きです。いや、そんな感情じゃ薄っぺらい、愛しているんです!」遂に重たい言葉がその口から飛び出して来たぞ。愛しているだなんて、重たすぎる。何処がそんなに好きなんだろう、と私が思考の海に溺れていたら、立向居君が見透かしたように「そんなの決まっているじゃないですか!全部ですよ、全部。足の爪先から髪の毛の一本に至るまで全部愛しているんです!」なんかずく、その優しさが一番大好きですけどね!と付け加えた。私は別に優しくはない。特に立向居君だけに、優しくした覚えはない。



カァカァ、鴉の鳴き声と良い子供は帰る時間を知らせるチャイムが響き渡る。立向居君が現実に戻ったように、ハッと息を飲んだ。そして、私の頬を愛しげに撫でたと思ったら。そのゴールキーパーをやっているため逞しい両手で私の顔を挟んだ。そして、顔がどんどん近づいてきた。私は逃げなきゃと思っているのに桎梏されている、両手から逃げられずに遂に、唇と唇がくっついてしまった。立向居君はうっとりとした様子で「俺の本気、ファーストキスです、ねっ、信じてくれますよね?明日も逢ってくださいね?絶対ですよ。浮気なんて許しませんから」なんて病んだ言葉を吐き捨てながら桎梏していた両手を離して送りますね。なんて私の手を無駄に繋ぎながら歩き出した。夕暮れが私たちの身長よりも影法師を長くしていた。

Title カカリア

あとがき
たじたじになっているのか押せ押せに成っているのかすらもわからなくなりました。多分立向居君書くの初めてです。


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