雷電



「私も、兄弟がいれば賑やかだったのかしら。ちょっとだけ、雷電君が羨ましいのよ」
名前がはしゃいでいる雷電の兄弟を微笑ましげに見つめて視線を落とした。名前は一人っ子だから、兄弟というものをしらない。いいところも、悪いところも兄弟というのにはあるけれど……無いものねだり、隣の芝生は青い。つまりは……いいところばかりが目に映ってしまうようだった。雷電はそういわれて悪い気はしなかったが、少し不思議に思ってしまった。あまりにも身近過ぎて、雷電には有難みも何も無かった。



「兄弟、か。結構、煩いぞ?」それでも、羨ましいのか?と、雷電は苦笑すると名前は躊躇することなく小さく頷いた。「うん。私は一人っ子だから……さ。喧嘩も、一緒に遊べる兄弟もいなかったからたまに、お兄ちゃんでもいたらな……なんて思っちゃうのね」あーあ、雷電がお兄ちゃんだったらな、なんて悪戯な笑みを浮かべてそう付け足した。実際、兄弟が沢山いる雷電は頼もしいものだった。小さな兄弟が居る分余裕があるようなそんな雰囲気があった。「兄ちゃんが欲しかったのかよ」



俺が兄貴でも何もいいことないぜ。と、照れたように視線を名前から弟たちに移した。様子的に、名前に言われた言葉に嫌だとは感じていないようだった。「そうかな?頼もしいじゃない雷電君。いいなぁ……」「そうかぁ……?」褒められて悪い気はしないけど、あんまりそういわれると困ってしまう。そもそも、そんなに褒められたことがない。どう返せば適切なのか、それもわからない。



「じゃぁ、名前が俺と一緒になればいいんじゃないか?ま、煩いだけだけどな」「そっかー。なるほどねー。……………うん?」一旦、名案だ!と納得した名前が不思議そうな顔をした。しばらくして、意味を理解したらしく顔を赤くした名前が言葉を詰まらせた。雷電も意識していったわけではなかったので、それを見て慌てて名前に詫びた。「わ、わりぃ……。深い意味は無かったんだけど」「き、気にしてないよ!」口から出てきた言葉は、裏返ってしまった情けない声だった。先ほどまで聞こえていた賑やかな子供たちの声が聞こえなくなっていた。「あー、お兄ちゃんとお姉ちゃん。むぐっ」「しっ、駄目だよ、兄ちゃんの邪魔をしたら!」……彼の兄弟は、空気が読めるようだ。

戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -