(鉄拳/仁)
友人に頼まれて書いたものなので間違っていたらすみません。一応鉄拳はやっています。


「可哀想に、仁」女の繊手が、仁の筋肉で盛り上がった胸を這った。一人ぼっちの仁に対して名前は理解を示す様に、寄り添った。仁は最初は嫌だと思っていた。こんな自分の事を、理解する女等奇矯である。或いは、陽狂か。どちらにせよ、変わり者には違いが無かった。「俺は、可哀想ではない」仁は己自身を哀れんだことは無い。母を亡くしたときも、父が居なくても、祖父に裏切られても。ただ、言えることは……この女はどんな時でも寄り添ってくれたという事実だけだった。それだけが突きつけられていて、仁は困り果てていた。この女は仁を機微に知っている。それこそ、知をつかさどる賢者の様に。「仁、愛しているよ。大丈夫、一人じゃないから、私がずっと傍に居てあげる」



女の細い筋肉のついていない腕が仁の首に回った。それと同時にくっつく丸みを帯びた女特有の匂いと痩躯。「ああ、居てくれ……」弱さ等他人に見せたことは一度も無かった。恐らくこれからも無いだろう。頼むから、そう幼子が希うように。ただ願うように。一緒に居てほしい存在は、いつだって、傍にいた。危険な戦いに巻き込まれた時も彼女だけは守り抜いてきた。ああ、己の感情は……そう、恐らく。「俺も、名前が好きだ」初めて持った感情を持て余していた。このまま何処かへ飛んでいきそうな綿埃のような軽い物では無くて、ずっしりと真綿が水を吸ったかのような重さがある、それ。愛、とはかくも恐ろしい物でこうして、共依存だと思っていても当人たちはそれに溺れている。底なし沼に足を取られて溺れながらも幸福だと、僥倖だと思い続けている、底に足がついてもずっと。息が続かなくなって、気泡すらも浮かばなくなっても。



仁の逞しい鍛えられあげられた腕が名前の痩躯に回される。初々しい愛情表現だった。彼女は充足感を得ることが出来る。それだけでいい、それだけでいい。「おやすみなさい、仁」「ああ、おやすみ、名前」星々の囁き声が聞こえる、もう、夜明けは近い。二人は抱き合う形で眠りにつく。互いが互いを求めあい、何処かへ行かないように。それだけが恐ろしいのだ。ただ、互いの体温を共有している今、安堵に包まれていた。

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