青春は待ってくれない



(剣が君のシグラギと斬鉄/学パロ)


足を投げ出して、授業を聞いていた。相変わらず詰まらねぇな。歴史の授業って言うのは、大昔に人と鬼が争って、人が勝利し鬼は帯刀を許されなくて諍いがあったとかなんとか。今?今は人と鬼が一応共存している。家庭を築く奴もいるし、男女の関係の奴もいる。そんな感じ、別に興味ないが……。そういや、別のクラスに温羅の鬼が居るとか居ないとか。まぁ、こっちも興味がないが、俺たちは一本角の鬼だが、奴らは二本あるらしい。お、どうやら、授業が終わったらしい。こっちはサボるか寝るか時たまこうして聞き流している時が多いのだが……「シグラギちゃーん!!」後ろから衝撃が加わって前のめりに机とご対面しそうになったが、鬼族が人間如きの力に負けるはずもなく、俺は微動しただけにとどまった。



「うぜぇ」俺の言葉にめげる様な相手ではないのだがつい、悪態をついてしまう。一々、飛び掛かられる身にもなってほしい。大体何でこいつは俺に付き纏う?今は俺の髪の毛に顔を埋めているし。「きめぇ……。男の髪の毛に埋もれて何が楽しいんだ」確かに雑に伸ばしているけど。今は腰のあたりまで髪の毛が伸びているはずだ。斬鉄も伸ばしているが俺は面倒くさくて束ねるという事をしていない。「シグラギちゃんの匂いだ〜」「はぁ?」意味わからない。俺の髪の毛なんだからそりゃ俺の匂いがするに決まっている。っつか、いつまでも俺にべたべたするんじゃねぇ。片手でどかしてやったら、何か凄く残念そうな顔をしていて、一緒にご飯食べようよ!って俺を誘ってきた。



……。まぁ、いいだろう。斬鉄も混ぜて、一緒に食おう。じゃなければこいつうぜぇだろうし、うざいに更に拍車をかけてウザくなるに決まっている。一つ学年が上の斬鉄を呼んで屋上でコンビニで買ってきた弁当を展開させ茶を飲む。因みに斬鉄も俺と同じで鬼族で一本角だ。斬鉄の奴も面倒くさがりと言うか、購買で買ってきたパンにかぶりついている。栄養偏りそうだなと思ったが、敢えて口にしない。「うわ、斬鉄……栄養偏るよ……」「ああん?俺は腹が満たされれば十分なんだよ」斬鉄と名前が言い争っている。というか心配されている。まぁ、確かにバランス面では俺の方がマシだからなと唐揚げを箸で器用に摘まみあげて咀嚼する。「もう!私のお弁当わけてあげるから!斬鉄は見ていられない!」「なんだァ、名前。俺に惚れたか?まぁ、お前なら俺は構わねェけど」「?!なっ、名前っ」なんだと……名前が斬鉄に惚れて……?!ってなんで俺はこんなに動揺しているんだ!落ち着け俺、深呼吸だ深呼吸。吸って吐いて。



「好きじゃないもん!斬鉄も格好いいけど!」「くくっ、冗談だ。シグラギの野郎がうるせぇからな」「なんで、そこで俺が出てくるんだ。関係ないだろう」そういうと斬鉄が目を丸くさせて、ほぉ……と底意地の悪そうな笑みを作って尖った牙を見せつけてきた。そして、名前の肩を抱いて引き寄せた。そして戸惑う名前をよそに耳元で囁きかけるように「なぁ、シグラギなんてやめて、俺にしたらどうだ?俺の女になれば、不自由させないz「斬鉄!いい加減にしろ!」思わず声を荒げてしまった。なんで行き成りこんな事をするんだ!とか、俺の女とか、了承も取らずにそんなの勝手すぎるとか憤りを感じながら。「はっ、全く。自分の気持ちにも気づいていねェあんな奴の何処がいいんだか、シグラギに飽きたら俺の元に来るんだぜ?名前」「う、うん……振られたら慰めて貰おうかな?」そこで頷いた名前にもカッと頭に血が上りそうだった。「くくっ、良いぜェ、慰めてやるよ」



面白くねぇ……。もう二度と斬鉄と名前を逢わせたくないくらいだ。なんだって頬染めやがって、そんなに斬鉄が好きなら俺の所に来るんじゃねぇよ!苛立ちながら帰りの支度を済ませる。乱雑に教科書やらを鞄に詰めただけだが、また、名前が俺の元にやってきた。「一緒に帰ろう!シグラギちゃん!」「ちっ、斬鉄と帰っていりゃいいだろ!」「なんでそこで斬鉄が出てくるの!」「……っ!」



結局二人で帰る羽目に成る。斬鉄がいつもなら隣にいるんだが今日は居ない。珍しい事もあるんだね、と名前が言っていた。ああ、確かに珍しい。「シグラギちゃん。なんで斬鉄呼ばなかったの?」「うるせぇ……」斬鉄斬鉄斬鉄、こいつは斬鉄が好きなのか?だったら、なんで俺に構ってくるんだ。俺にもう構うな、と苛立ちに任せてそう咆哮するように力任せに怒鳴る、泣きそうな顔の名前が俺の目に映る。ハッとしたときには遅かった。駆けだす名前を止めようと延ばした手は宙を掴んでいた。「畜生、なんだっていうんだ」俺は一体どうしてしまったんだ……。斬鉄が絡むと途端にイラついて……八つ当たりに近い形で名前を怒鳴ってしまった……。自己嫌悪に苛まれていたら、後ろから肩を叩かれた。「馬鹿じゃねェのか?」その声は怒りの渦中にいた人物の一人であった。「いい加減自覚しろ。お前はあの女が好きだから俺が絡むとイラつくんだろうが」す、き……?俺が?誰を?



「早く追え、さもなくば本当に俺が名前を取るぞ」「っ!」俺は駆けだしていた。名前の走り去った方角へ全速力で。こんなに全力で走ったのはいつ振りか忘れてしまったが只管名前の見えない背を追いかけた。そして、その背を「捕まえた」「!」「おい、一度しか言わねぇぞ。俺は、お前が好きだ」返事の代わりに飛び突かれて俺は駆けだした疲労とでよろめいた。「私もシグラギちゃんが好き!大好き!」だが、それもその言葉で直ぐに忘れてしまった。


title 箱庭

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