損な役割だ。



(声カレの要/×夢主←煌)

「ねぇ、なんでヨウなの?」前触れも無く唐突に放たれた言葉は重たい空気を纏っていた。眼前に居る煌は何故だか、切なそうな表情を浮かべていて少し突くだけで決壊しそうな程であった。「俺たち見た目も性格も似ているのに、何でヨウなわけ?教えてよ名前ちゃん」手の甲を頬に滑らせて、今にも泣きだしそうな目に涙の膜を張っていた。「母さんだって同じ服同じ髪型にしちゃえばわからないのに、名前ちゃんは簡単に見抜いたね」変装して二人が並んだ時私は直ぐに右が要だと名前は分かったのだ。何故かわからない、だけど、直感がそう言っていた。



「あのね、煌君、」「煩い、俺はいつも損な役割しか回ってこない。何かあれば、お兄ちゃんだからとか理由づけられて、俺が欲しい物は必ずヨウに回って行った」たった少しの差で兄に成っただけなのに。好きで成ったわけでもないのに、変装してしまえば分らない癖にと歯をギリリと食いしばった。「今だってそうだ。俺が欲しいものは全部、取られている。名前ちゃん、俺も好きだったよ。なのにヨウの奴、知っていたくせに知っていたくせに」「煌君、」名前の小さく空いた唇からは吐息と、彼の名前だけしか出てこなかった。かける言葉を見つけるのには随分と時間が必要だと感じた。



「ねぇ、ヨウに成ろうと思えば俺だって、成れるんだよ?それでも駄目なの?」「だって、煌君は煌君だし、要君は要君だもの」というとあっははははははは!と笑い出した虚ろな目つきで名前を捕えていた。その目には諦観も含められていて、複雑な色合いをしていた。「双子って不思議だね、好きに成る女の子も同じだなんて、さ!」俺は名前ちゃんの事が大好きだよ。って涙で濡れた睫毛で瞬かせて名前にキスを落とした。


戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -