生まれてきてくれて、有難う



(忍び、恋うつつ/服部)
誕生日ネタ。


風が冷たく成り本格的に冬を感じさせられる季節に成った。日によってはひらひら雪の花弁が目の前を、舞い踊るのだが、今日は雪は生憎降っていないらしい。今日と言う日は特別なのだ、私にとっても服部君にとっても。と言っても、私たちは誕生日という西洋の文化を我来也君に教えて貰ったので何となくこの日だろうという日を誕生日として一つ年を重ねている。つまるところ、本当の生まれた日付はわかっていなかったする。特に私なんかはそうだ。平民だからこそ、余計に。我来也君に西洋の書物を借りてれくいえむ・ぽいんとで読んで、西洋の菓子、かすていらを作ってみたのだが、これには私と服部君との縁がある。昔、服部君が私の教室に配られたというかすていらを食べてこれには水銀やら灰汁やらが混じっていて最悪、病を得ることもあると言ったのだ。だから、その時の感謝の気持ちも込めて作ってみたのだ。といっても西洋の菓子なので無い材料もあったが、それなりに似て美味しい物と成った(毒見済みである)。



「服部くーん!」最近、傍に居たいと思っているであろう服部君を避けて、挙句の果てに主としての命令で近づくなと言ってしまったので、それを黙って実行していたが度々、我来也君がわざとらしい咳払いをしていたのを覚えている。あれは何だったのだろう?服部君が悲しそうな顔から一変して呼ばれて嬉しそうに顔を綻ばせた。「!名前」そして、私に駆け寄ってきたので私はその手を、引いて私の部屋に呼び寄せた。服部君は緊張しているようだった。最近の行動から不安にさせてしまうことが多かったと思う。だからだろうか、口から出てきたのは「君は、若しかして自分と別れたい……のか?」涙目に成りながら私を見つめてきた。今にも零れ落ちそうなそれを拭ってあげて違うよと否定した。「ならば、何故私を遠ざけた!君に若しもの事が有ったら私は生きていけない!!」服部君が声を荒げたけれど私に若しもの事なんて無いから安心してほしい。そうもいかないのだろうか?流石は元豊臣様に仕えていた忍者である。



「えへへ、かすていら。これ、作ってみたんだ」「?な、何の為に……」そういうと服部君に「誕生日、我来也君に教えて貰ったでしょう」とはにかんでみせた。服部君はハッと全てを悟ったようにかすていらを受け取って食べていいかと了承を得てから、口に含んだ。毒は勿論入っていないので、口に逢えばいいのだけどと心配していたら服部君がポロリと涙を零した。あれ、美味しくなかったのかなと心配して顔を覗きこんだら唇を噛みしめていた。「毒見以外で、こんなに美味しい物を食べたのは、初めてだ。ましてや姫である君にこんな美味しい物を作ってもらえるなんて、私はなんて幸せ者なのだろう」「そんな大げさだよ」私に料理を作る技術はあまり備わっていないし、料理の腕前だけで行けば服部君の方が断然上である。服部君に監禁されていたときに運ばれた料理の方が美味しかったもの。そう口を尖らせれば「馬鹿な事を言う奴め、」と泣きながら笑まれてしまった。幸せそうなので良かった。ああ、でもまだ終わりじゃないんだった。



「服部君は前に、自分が生まれてきたことを私に謝ってきたよね。もう二度とそんなこと言わせたくないの。私が幸せにしてあげたい、一緒に居たい。だから、生まれてきてくれて有難う、服部君」

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