ほら、世界は美しい



(剣が君の螢)
ネタバレ注意


螢と結ばれた、までは良かったと思う。様々な困難があったし、許嫁の件や鬼と人との結婚の難しさを体感した。しかし、思うのは……これで本当に良かったのだろうか?と言う所である。螢の事が嫌いなわけではない、寧ろ好きだ。慕っていなければ、一緒に成ろうと思うわけも無いわけだし、ましてや鬼という壁が立ち塞がっていたのだから。悩むべき点は此処である。温羅の子孫である螢が人間の私と結ばれて、此処で血が途絶えてしまうのでは?という事である。はぁ、と大きく溜息を吐いて、未だに鬼族の慣れない衣装の裾をぎゅっと掴んだ。



本当は呉葉ちゃんと結ばれた方がよかったのでは?と思ってしまうのはそのせいだ。血族が絶えれば困るのは私ではない。「ねぇ、螢。本当に呉葉ちゃんじゃなくてよかったのかな」「んだよ。呉葉は関係ねぇだろうがよ」ぶっきらぼうに、されど苛立ちを隠せないと言ったかのようにバリバリと頭を掻いた。「だって、私と螢の間に赤ちゃんが出来た時、角無いかもよ?此処で温羅の血が絶えちゃうかもしれないんだよ?それでいいの?螢。私不安だよ」此処には人間はいない中々訪れないたまにわけありの鬼等が訪れてくるだけで殆ど鬼に囲まれて生活している。絶対に安穏というわけではないが、螢を慕う鬼たちは、私の事を奥方と呼んでくれる。



「温羅の血が絶えるか……まぁ、そうかもな」「!?何でそんなに軽いの!」信じられないという姿勢を取ったまま、目を丸くしてしまった。螢にとって温羅の血ってそんなものなの?おじい様も許してくれたとはいえ、本当にこれでいいのかと思った矢先の言葉で凍りついてしまった。「だって、傍には名前が居てくれるし。俺それだけで満足なんだ」「螢の馬鹿!恥ずかしいよ……、」螢の照れたような顔が嬉しくてつい目を凝らしてみてしまうと、螢にあんまりじろじろ見るな。恥ずかしいだろう。と諌められてしまった。



「それよりお前からそんな深刻に考えているとはな、だからって呉葉はねぇだろ……あいつだって、もう所帯持っているんだからよ……」「だって、螢。おばあ様から聞いたけど、昔は呉葉ちゃんをお嫁さんにするって」「だーっ!そんな昔の話持ち出してくるんじゃねぇ!あれは餓鬼の頃の話だろうが!今はお前が……その……一番、だからな」螢はやはり照れ臭そうに、何もない空を見つめていた。「それより、赤ん坊の話だけど、そろそろ試してみるか?」「えっ?!」試すって、そういうことだよね?!待って待って、そんなのまだ早いよ。って螢に抗議したら冗談だ。と冗談じゃなさそうな目のまま、くしゃりと髪の毛を撫ぜてくれた。


Title リコリスの花束を

戻る

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -