天使と悪魔の共存を図る



(剣が君のシグラギ)

次作

鬼だ。と怯えた人を見て、俺は何をしたんだ?って悔しくなった。なんだよ、俺の正体を知る前までは、俺と恋人ごっこしていたじゃねぇか。それが鬼だと知った瞬間がらがら瓦礫の山に成っちまうんだ。可笑しいじゃねぇか。名前は憎い人間だと知りながらもそのおおらかな心と優しさに惹かれて俺は恋人として傍に置いていた。だけど、ある時、突風で煽られて俺の頭巾が外れちまった。それから、名前は鬼だったなんて、と畏怖の目をして俺の所から逃げ出してしまった。俺は奴の着物の裾を掴んで、抱き寄せて暴れるそいつに好きだ、と伝える事しか出来なかった。何故、こいつに此処まで拘泥するのかわからない、ただ、愛している。それだけだったのに。



虚ろな目で今は俺たちの本拠地で空をぼんやり眺めている。同じように、顔を上に向けてみれば星々が煌めき、様々な宝石が瞬いているようにも見えた。その中にひときわ大きな月が煌々と照っていて、今日は妖怪どもも大人しいだろうなと他人事のように思った。妖怪は人を食らうものも居る、だから俺がこうして守ってやればいい。「鬼の癖に……私を騙して、連れ去らうなんて」ポツリ、言葉が俺の胸を突き刺した。無数の針の上を歩かされているような気分にもさせられる、鬼、人、妖怪。この三種は絶対に相容れない。そして、名前は人で俺は鬼だ。どうしようもない事実の前にただただ頭を垂れてしまう。



「知る前までは普通に好きだって言ってくれたじゃねぇか。なんで、」なんで、鬼だと知った瞬間に拒絶するんだ?角があるか、無いか、少々力に差があるか無いか、その程度なのに。どうして?想像が頭を支配しはじめる。名前は恋人だ。「嘘つき!鬼族だって知っていたら私は、恋仲になんか成らなかった!!」悲壮な叫びだった。鬼だから、それだけで、俺は名前と恋仲にも成れない。それどころか嫌われてしまう、そんなの可笑しい、可笑しいじゃねぇか!



今までの人間への鬱憤と、それから行き成り態度を変えた恋人に対して怒りを抑えきれなくて下が砂利とごつごつした小さな石があることも忘れて押し倒していた。馬乗りに成った俺は、何故だか無性に悲しくて、辛くて苦しくて、呼吸もままならなくて、嗚咽しながら名前の首を絞めていた。「殺してやる!殺してやるっ!!理不尽すぎんだよ!この世界は!俺たち鬼族に対して優しくねぇ!こんな世界……俺たちがぶっ壊してやる!」月明かりの下ドンドン顔から色が失われていく名前を見て、俺は本当に愛してやまない名前を殺めてしまうんじゃないかという恐怖に駆られて漸く、手を離した。赤い奇妙な(手のひら)模様が呪縛のように名前の首に纏わりついていた。



「愛している、愛しているんだ、頼む、俺を」嫌わないでくれ。そのまま、名前の上に泣き崩れ落ちて行った。名前はげほげほと咳き込んでいて漸く新しいきれいな空気を吸い込んで、呻吟しながらも自分の生を確認しているようだった。なんで、こんなに理不尽なんだろうな?


Title カカリア

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