湖の水底で



(・ミロカロス♀で喋らない、綺麗な感じの百合)


名前が最初ミロカロスを見つけた時はぴちぴちと元気なくはねる、みすぼらしい姿をしたヒンバスだった。その日は土砂降りで、水たまりにポイと捨てられていたのだ。このままでは死んでしまうと名前はあまりにも哀れに思い、彼女を拾ったのだった。名前はヒンバスを自分の手持ちと同じだけ、いや、捨てられて傷心気味で人間不信だったヒンバスに愛情を注いだ。ポロックを作ってはあげて、可愛がった。次第に心を開いて、懐いてくるヒンバスに愛らしさすら覚えたのだった。だが、そんな生活にも終わりがやってきた。否、終わりと言うよりはまた、新しい始まりだ。ヒンバスが進化したのだ。



それは美しく嫣然と笑んでいるように思えた。「あ、貴女……ヒンバスよね?」一応問い掛ける。あまりにも容姿がかけ離れていたからだ。名前は気おくれしてしまうのも無理はなかった。コクリと頷いたのを見て漸く安心したが、なんだか、心臓が病気にかかってしまったように、ドクドク早く脈打つのを感じた。これはなんだ、相手は人ではない、ポケモンじゃあないか、と自分に言い聞かせいつものように接した。……だが、それも長くは持たなかった。家の近くにある小さめの湖にミロカロスを出すと他のポケモンを出さずにミロカロスに屈ませ彼女の頭を撫でた。「ミロカロス……」



それに応えるように気持ちよさそうに目を閉じた。ポケモンと人間は恋に落ちるのは禁忌なのだろう、しかも同性と来たら更なる禁忌を犯すことに成る。それを名前は知っていて、何も言えなかった。「私もポケモンに生まれたかったなぁ、こんな気持ちを抱えたまま生きるなら」その言葉をミロカロスは理解していたのかもしれない。湖の方へと引きずり込んできた。いつもならばこんな乱暴な事をしてこないのに急にどうしたのだろう?と名前は突然なことに対処できずにそのまま湖の中に引きずり込まれてしまった。ミロカロスの引っ張る力から逃れようと必死にもがいたが、ミロカロスの長い胴が離してくれなかった。



短く鳴き声を上げて、何かを希求しているように見下ろした。びしょびしょに成った、名前はミロカロスが己に抱いている感情を見透かしていることに気が付いた。これはもう言い逃れは出来まいと、名前は恐る恐る口にした。「ミロカロスが、好き、」それだけの短い言葉だった。けれど、人間の言葉を理解しているミロカロスにはそれで十分だった。好きだの、愛しているだの、人間の言葉を話せなくてもミロカロスはヒンバスの時から愛情を注いでくれた名前を愛していた。当然の様に思っていた、一番大切な人だと。あんなみすぼらしい自分を愛でてくれて、愛していないわけがない。そう、それこそ、好き等と言う言葉では表せない程に。勿論恋愛的な意味でだ。だが、ミロカロスは全く禁忌だと思っていなかった。生物が異なる生物を愛しただけ、それだけにすぎやしないと。チュッと、リップ音を立てて名前の唇に口付けを施した。人間のそれとは違う感触に驚きながらも名前は応えた。



「ミロカロスも同じ気持ちで居てくれるの?」ゆっくりとしなだれるように頷いてゆっくりと緊張の糸をほぐすようにもう一度、今度は額に口付ける。「人間だし、私も女の子だし、それでも……いいの?」また風も吹いていないのに頷いた。それから、二人でぼんやり湖で揺蕩った。こんなことは初めてだった。それによって服が透けていて、それにミロカロスはちょっぴり戸惑ったが、マジマジ見るわけにもいかず、少しだけ目のやり場に困ってしまった。



「嬉しいよ、ミロカロス。こんなに嬉しいのは初めてだよ」ミロカロスは顔を首筋に埋めて精一杯の愛情表現を現した。もう、他のポケモンなど使ってほしくない、私だけを見ていてほしい。例え、それが行き過ぎた愛情だとしても。名前が己を愛してくれているという事実だけで世界はひっくり返るのだ。若しも、若しも、名前が他の人間の男を好いたとき自分は感情を抑えられるだろうか?否、きっと、裏切られたという気持ちが先行して荒れ狂うだろう。若しかしたら、名前を傷つけてしまうかもしれない。それだけはあってはならないのだ。名前はまだ若い。だから、女の子を好きに成るのもポケモンを愛しているという感情も全てが全て、偽物の感情かもしれない。だけど、今の感情を名前もミロカロスも否定したくなかった。紛れも無い、事実なのだ。事実がそこにあるのだ。湖の中で絡み合う二人は、幸せそうに笑う。


あとがき
百合なので、色々葛藤している感じに仕上げてみました。綺麗かどうか心配なのですが、ミロカロスは綺麗ですよね。私も好きポケなのでいつか書きたいと思っていたんですよ!鳩様有難うございました!

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