かわいそうの証明



(・海王シードが夢主人公を捕まえる。(鬼ごっこ。浪川喜峰湾田凪沢村上海図漁火))


普通のマネージャーっていうのはこういう目に遭うものなのだろうか?否、絶対に違うと思う。ハァハァと息を切らしながら全力で廊下を駆け抜ける。後ろには海王のシードたちが居て、私を捕えようと無数の手を伸ばしている。皆頭可笑しいよ!海王の近くにある、海で頭冷やせばいいのに!とかぐちぐちと脳内で絡まっているコンセントを解くように考えていた。そもそもの発端はこれだ。浪川の「バーベキューやって寒中水泳やろうぜ!」から始まったのだ。何を考えているのだ、この馬鹿は。と初めて浪川を心の中から侮蔑した。



野郎どもも野郎どもだ。そろいもそろって私を捕まえようとやってくる、さっきは海図ちゃんに捕まったけど小さかったから直ぐに振りほどくことが出来て、鬼ごっこは未だ継続中だ。とはいえ、私は筋トレも走り込みもしていない、ただのマネージャーである。このままではバテて捕まって強制連行されるのが落ちである。こんな真冬(雪がちらついている中)にキャプテンの頭可笑しい行事に付き合うのはごめんなので、私は隠れることにした。さて、何処に隠れよう。屋上は詰むから駄目、職員室は昔何処かの誰かが捕まったことがあると事前に知っているので、却下である。となると、この無数にある教室の何処かの掃除用ロッカーに隠れればいい話である。



私は曲がり角を利用して彼らの死角に入り込み、二の二組の教室をがらりと成るべく音をたてないように、教室の扉を潜り抜けて、ロッカーにもぐりこんだ。誰かの声が響き渡る。「ちっ、見失った!」あれは村上の声か。何処か苛立ちすら覚えているようなそんな声色であった。恐ろしい、恐ろしい。大体、嫌なら鬼ごっこに参加しなければいいのにと思ったが、きっと村上にも村上なりの考えがあるんだろう。湾田の声も聞こえてきた「階段とかの周り角をうまく利用して逃げただけだろ、まだその辺にいるぜ。まあ、超常現象ならそれはそれで、大歓迎だけど……」俺の勘がそう言っていると付け加えると、同調するように岬ちゃんが「そうだな」と言った。



まずい。感付いていやがるぞ、奴らと思ったがこれ以外に良策は無かったのだ仕方ない、寧ろ全力のサッカー部の奴らから十分も逃げ回ったことを褒めてほしいくらいだ。がくがく足が今更に成って震えているのに気が付いた。走りすぎたらしい。物音を立てない様に座り込んで、埃臭いなぁとか呑気に構えていた。ガラガラ、扉を乱暴に開ける音が遠くから聞こえる。虱潰しって所だろう、まだ私の場所はバレていないようだ。ガラガラ、また扉のしまる音が聞こえる。それから、この教室の扉を開ける音がクリアに聞こえてきた。



「教壇の下にはいないね、この部屋じゃないのかな」漁火君だろうか、幼い声が聞こえてきた。私は気配を殺して、隙間から覗く光に目を細めながら、教壇の周りをうろつく漁火君と湾田の姿を確認した。「あのなぁ、簡単にいねぇとかいうなよ。教壇の下に居ないなら、」チラリとこちらを見る湾田。「例えば。アレとかさぁ。あるだろう?」「成る程」確かにあれならば人ひとり隠すくらい容易い事であろう、と気づいたらしい。湾田と目が合わない様に慌てて逸らして体を固くして、息を吐くことすら忘れていた。



やばい、やばい。カツ、カツ……。一歩ずつこちらに慌てる様子も無く、歩いてくる。目がマジでさながら、試合でもしているようだ。開けないでくれ!と内側から力を籠めてでっぱりを掴む。「あかねぇ」「え、なんでだろう」「……。名前チャンか。ビンゴだな」湾田が渾身の力を込めて扉をこじ開けた。でっぱりは所詮でっぱりでしかなくしかも、男女差があった為に易々とあけられてしまった。扉の向こう側には惨めに埃臭くなった私が居て、やぁ、さっきぶりとカラカラ笑うだけだった。



寒い中のバーベキューとは何ぞや。浪川たちは本気で寒中水泳しているし、信じられない事に私の水着姿を妄想と言うか期待していたらしかった。誰がそんなことするものか。冬の、水を舐めちゃいけないよ。心臓が下手したら二度と活動しなくなってしまうよ。誰かが私を呼ぶ声がする。どうやら、肉が焼けたらしい。あと、海から取れた海産物も。ついでに。

title 月にユダ

あとがき

ヤンデレとは書いていなかったので普通の物を目指してみました。お気に召さなかったらすみません。5周年企画ご参加有難うございました。

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